第06話"木更津刑事殉職事件"

 ベテラン刑事がファイルの後ろ側から数十ページめくった先に"その事件"はあった。

『"サラ刑事殉職事件"』

署内ウチに来た当初はくるまにも部下アイボウが組まれる予定だったけど、イツ部下アイボウと組むのを拒否したんだよ。この事件を思い出すからって…」

「だから‥。」

『"さら志真緒しまお女性巡査。警視庁本部捜査一課刑事(事件)係亜車班所属。当時、かん無木なぎ区と昭島台あきしまだい市で発生した連続殺人事件を合同捜査中、昭島台市内にて何者かに襲われ、殉職。本件の殉職により、二階級特進。警部補となる。"』

「あれ?」

 事件の詳細を読んでいた新人刑事が何かに気づいた。

「どうかしたか?」

「確か当時、連続殺人事件の捜査中に起こった事案という事で、この事件には報道規制がされていましたよね?」

「そうだな。」

「自分の記憶が正しければ、殉職した巡査のまでも報道規制の対象にしていたはずですよ‥」

「それは、どういうことだ?」

「つまり、木更津志真緒刑事が女性巡査であるという事は犯人にしか知り得ない情報だという事です!」

 新人刑事が語気を強めて言うと、その意味に気づいたベテラン刑事は目を見開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る