ストーリーの構成が奮っている。読者はまず、冒頭の戦闘シーンに度肝を抜かれるだろう。ロボットをテーマにしたカクヨム内の私的品評会で最優秀賞を射止めた作者の筆力の面目躍如である。最優秀賞を受賞した作品は別作品なので、これから読んでみよう、と私は考えている。
さて、本作のレビューに戻ると、冒頭の戦闘シーンで主人公達の力量を始めとしたキャラ設定がシッカリなされ、中盤で主人公達の現在が語られ始める。
これが凄く格好良いのだ。格好良過ぎる。眼をショボショボさせて、スマホで投稿作品を読んでいる貴方ならば特に、主人公達に激励され、勇気を貰えるであろう。
細々とした設定にも配慮が行き届いており、一級のSF小説と言い切れる。
タイトルに"ダイバー"とある通り、"潜る"内容だが、浮力ではなく重量を感じる。読まないと勿体無い。
旧タイトルで見掛けた時には文字数がもっと多かったと記憶しているが(私も老齢なので記憶に自信が無い)、その時の作品を読んでみたいものだ。それ程、後ろ髪を引かれる作品である。
木星大気の底、金属海を舞台に戦う巨大人型兵器が、音響兵器、そしてブラックホールウエポンを撃ち合うって!
老兵たちが若き日の戦場へ舞い戻る……というか、潜ります。
3600万気圧の金属海に! その高圧地獄の最中で機動し、狙撃し、生命の奪い合いを演じます。
一風変わった設定を持っていますが、緩い誤魔化しなんてどこにもない完全にハードなSF作品です。
機械の雄叫びや破壊音が聞こえるような重い文体ですが、展開が魅力的なせいか、ガンガン読めます。
そして老兵たちの友情と絆が熱い。信頼の上に成り立つ無茶すぎる作戦が、読み進めるたびに熱く語ってきます。
特にラストの「海刃」を駆るブル爺様の全力全開ぶりは、賞賛を通り越して寒気がするほど。
熱い男たちのかっこよさをぜひご覧ください。
はじめ読んだ時の感想はロボものにしてはかなり異色な作品だなと思いました。
というのも「金属海」はかなり特殊で、液体金属の海、というのが想像しづらい物だったからです。ただ読み進めていくとそれがかなり極限状態な背景を醸し出しているので、ここがヘルダイバーという作品の中心なのだなと、私はかなり楽しめました。
またもう一つの見どころとして、老兵の生き様があります。だいたい物語における老兵ってかっこいいと相場が決まっていますが、例に漏れずかっこいいですw
ロボもの特有の用語もとてもかっこいいし、何よりラストはらしいなと思いました。
とてもいい作品だと思います!
深度は充分か? OK?
聴覚はクリーンか? オーバー。
主人公は、バカでクソったれなジジイ? クレイジーだな、おい。
さあ、潜ろうか、この文章の海へ。コピー?
緻密なSF世界に溺れそうになるほどのメカ描写。
死神が耳元にささやきかける地獄の潜行、常に死と音と隣り合わせ、そんな戦場で命を幾重にも海へ沈めてきた男の、最後に花開く信念と生き様。
私は、面白さのブラックホールに重く押し潰され、墜ちていきました。
この深く暗い金属海の底に射す光あれ。
愛を。
AIを。
その先に、白いワンピースの少女の残影。
最後に、感謝と敬意をもって、この言葉を。どうか。
――おやすみなさい――