~控室~

負けて控室に戻った五郎だが、まだ、震えは治まってはいない

元々、経験から見ても、(初戦で負けている五郎よりも、遥かに、日渡あたるのほうが、対戦歴が多い)勝敗は決まっているのと同然で、力の差と戦いの器量の違いを見せつけられた形となったのだ。それに何よりもメンタルの弱さが浮き彫りになってしまった。

相手の空気に押され、自分が委縮してしまった結果がこれだ。

自分の器量が最弱だとは分かっていたが、流石にここまでコテンパンにやられるといつまでも立ち直れない。

「・・・」

悶絶のように青い顔をして俯き額に手を当てて、はたから見たら吐きそうに見えた。

俺みたいない奴に、あんなに威圧しなくても―

そして、耐えきれない思いを吐露した。

「う~ん―いきなり“日渡あたる”はきついぜ!!」

嘆くよう本当に吐いてしまうにように絞り出した。

 叫んだ瞬間、それをすぐ言い消す奴が近くにいた。

「お前のそれ(・・)よりも~っと、ひどい目にあわされた奴がいるぞ。」

 その声に聞き覚えがあった。

 ゆっくり顔を上げると、梅夫の真顔があった。

「~~~何だよ?」

五郎はそんなこと言われて少し腹が立ってそっちを見たら、顔が近くにあって、少し、迷惑だなと思って言いさした、が・・・

梅夫は、真剣で深刻そうな顔をしていた。

「ちょっと―、顔貸してくれ」

そういうと、無理やり五郎を引っ張り上げて、どこかに連れて行った。

大男でがっちり筋肉質の五郎より梅夫のほうが痩せ型で、五郎よりは身長は低いが平均の男性レベル。体重差で考えたら明らかに、五郎を引っ張っていくほうが、体力を使うはずなのに、それを顔色一つ変えずにやってのけるのは、凄いことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る