二話~試合~ 04
五郎は、内心ぞっとして身を引いた。
(何なんだ、こいつは・・・。)
(観客はこいつの、こんな恐ろしい思念に、気付いていなのだろうか?)
無意識に小刻みに震える手を、慌ててもう一つの手で押さえ、恐怖でおかしくなりそうな思考を、落着かせるために視線だけを泳がせる。
日渡あたるが、姿を現すとスポンサーを表示していたたくさんの浮遊する電子画面がサーと退散していく。
―そうか、このスポンサーは日渡あたる自身についているのか・・・。
日渡あたるが作るコードは、この大会に出る 選手・・・他のコードファイターよりも一番上質と言われてどの企業でも喉から手が出るくらいほしいものなのだ。
だから、スポンサーになることで優先的に日渡あたるの技術提供を受けられるように、企業側がそうしているのだろうと思った。
よくあることだと思うが、上位の選手個人にスポンサーがつくことだってあるのだ。
この大会に出る上位者のほとんどの場合はデバイスの全容のコードの公表、提供を企業側に有料で公開している。いや、正確にはコードの公表、提供を法律で義務づけられていることはいるのだが、お金での取引に関しての規制がないため。それを入手したい者たちは無償よりはお金や優遇処置をしてより強い選手を自分たちの中に引き入れているという感じだった。
それにすべてを公表する義務はなく、その構成されたデザインのコードの一部だけを、取引したものにだけ公表でも、技術提供だけでもいいのだ。
それは、公表したことによって例えば、インターネット上でその公表したコードが閲覧できるようになれば、それは提供者が不利になり、今後そのコードを使う時は躊躇せざるおえなくなるという不安要素を取り除くためだった。
新たに作ればいいだろうと思うものもいるだろうが、コードファイターの中には、こだわりが強い奴がいて、今のコードを基本として、発展させているものを使っているものもいるのだ。ようするに、屋台骨があり、そこにオリジナルのテントを張り付けたり、テントを飾りつけたり、いろんなことしていると云う事だ。屋台骨を知られてしまうと、ウエイカーなら大体のその人物の技術力が分かってしまう・・・。こだわりの強い奴は、デザインは変えても屋台骨はメンテナンスするだけで初期の頃に作った最初の技術でずっと投資しているものもいるので、その配慮でそう云った規制になっていた。いわいる法の抜け穴である・・・
国・・・、いや世界全体が、ウエイカーに謀反を起こされるのを恐れているのだ。彼らはプログラムでネットワークそのものを支配できる。その気になれば、水爆よりも凶悪な武器を作ることだって容易い。そんなことをさらりと出来る鬼才だ。規制はするが拝領はすると云うのが、その表れだった。だって、ウエイカー以外、ウエイカーに対抗できるのはいないからな・・・。
取引や受取、情報の交換などには、きびしい規制が敷かれていないため、ウエイカーが作るコードは高額で取引されるうえに、就職も有利だったり、さらに新しい強いデバイスを作るためにいろんな優遇を受けられたりと、いろいろと、特権があるのだ。 だから、最初のうちは、コードの公開に対しての抵抗があるものでも次第に、有償で公開したりするようになっていく。
だが、日渡あたるは、自分についてるスポンサー以外にはコード技術の公開と提供を拒否しているため、法外な値段で(十代遊んで暮らせるような金額)技術提携を組もうとしたりする常識はずれな財閥系や大会を主催する大元の団体に勝手な思い込みで圧力をかけたりする無粋な大企業などもいたりといろいろと彼女を巡ってはお騒がせがある。
しかも彼女は、それらのすべてのお金の誘惑や圧力をものともせずに、自分が頭を下げてスポンサーにわざわざなってほしいとお願いした企業のみと提携を結んでいた。
おまけに、彼女は他に技術提供を行っているのであれば、デバイスのコードの公表を拒否しても構わない。という規制の抜け穴を利用して、彼女自身のデバイスのコードについては非公開を貫いているため。
彼女のデバイスの構成プログラムは、全貌が謎。
ほとんどのデバイスが強化されている中で、きっと初期のままで、しかも一位をキープ勝ち続けていると憶測を呼んでいるため、みんなの注目度も高いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます