今日は何の日? 俺と了華の夏
荒木シオン
プロローグ:なんだよその部活は!?
よっしゃ~!! 明日から高校最後の夏休みだ!!
今年こそ、今年こそ俺はリア充になってやる!!
体育館での終業式と面倒くさいHRが終わった昼少し前の放課後。
人も疎らになった教室で俺はそんな決意を固めていた。
あ? 夏期補習? あんなもんブッチだ、ブッチ。
今の俺の最重要課題は女の子とキャッキャッしながら海で遊ぶ事だ!
夏祭りに行き、花火を見て、帰りに良い雰囲気になる事だ!!
一夏の忘れられない思い出を作り、俺は大人の階段を駆け上がる!!
そう思った矢先、ピンポンパンポーンと流れる校内放送。
『3年C組の
……俺は何故生徒会室なんぞに呼ばれた?
はっ!! まさか俺の【夏休みイチャイチャパラダイス計画】がばれたか!?
いや……無いな。しかし、たり~ぃ生徒会室とかアイツがいるのってに……。
あぁ~、廊下あちぃ……っと、生徒会室に到着。何だって最上階に作るかね。
部屋のドアを開けると、流れ出てくる冷気。
おうおう流石は生徒会役員様方、エアコン完備とか良い暮らしをしてらっしゃる。
そんな事を考えながら部屋に入ると、窓辺に女生徒が一人。
腰まで届く黒髪に、白磁を思わせる肌、思わず守りたくなる様な華奢な体。
容姿端麗才色兼備、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。
ってな夢を全校男子生徒が見ているこの女生徒こそ生徒会長である
そして、俺が最も会いたくなかった幼馴染でもある。
部屋に俺達以外は誰もいないって事は、呼びだしたのは十中八九コイツだ……。
マジかよ……あー超逃げ出してぇ~。
今すぐ逃走したくてげんなりしていると、耳朶を打つ鈴を転がす様な声。
「よく来てくれました、
ふっ、輝くピュアスマイルを向けながらそんな事を言っても無駄だ。
その辺にいる一山いくらのモブ男子と俺は違うのだよ、幼馴染様。
故に宣言する!!
「いや、断る!!」
「何でですか!?」
信じられないと目を見開く了華。
何でって俺には既に計画があるからだよ馬鹿め。
まぁ、そんな事は口が裂けても言わないがな!
「あ? 夏期補習とかあるだろうが。遊ぶ暇なんざねーよ」
どの口が言うかって? この口だよ!
ははっ、正論を振りかざせば了華は折れる。
これが幼馴染の経験値だ。敵を知り己を知れば百戦危うからずってな!
「大丈夫です! 補習から私達二人は外してもらいました。生徒会権限で!」
!? 何やっちゃってんのお前!?
と思わず叫びそうになるが、冷静になれ俺。
クール、クール、
「だから、安心して私と遊んで下さい!!」
だから、何故そうなるのか……。
はぁ……溜め息を吐く位は許してくれ、マジで。
こうなると了華は絶対に折れない……これも幼馴染経験値。
被害を抑える為には適度に付き合って、こいつが飽きるのを待つのが得策だ。
「分かった、分かった。で? 何すんだよ、お嬢様?」
あ? お嬢様呼びの理由? こいつが本当にお嬢様だからだよ。
因みに俺は平々凡々なしがないサラリーマンの息子だ。
……何が縁でコイツと幼馴染になっちまったんだか……人生分かんねぇ~。
俺のそんな複雑な心中を察することなく了華は嬉しそうに話し始める。
「はい! 私部活をやりたいんです、
「は? はぁぁぁ!?」
いや、待て待て、今は高3の夏だぞ!?
「ちゃんと申請も通して作っておきました!!」
新設かよ! ってかその申請通すのは生徒会だろうが!!
とんだマッチポンプじゃねーか!!
なんて事は思っても絶対口には出さない。理由? 後々面倒臭いからだよ!
「へぇ~、そうか。でもなんで今更部活なんだよ?」
しかし、訊くべきは訊く。
なんにも分からず巻き込まれるのは御免だ!
「えっと、私入学以来ずーっと生徒会役員だったじゃないですか……だから部活とかした事無くて……やってみたいなって……」
少し恥かしげに訳を話す了華……そういやそうだったな。
あまりに優秀だったからか1年で書記、2年で副会長、3年で会長と役員を歴任してたっけか。
チッ……そんな事聞いたら少しは真面目に構うかとか思っちまうじゃねーか……。
甘いねぇ~俺も……。
「はぁ……そうかよ……で? 部活ってどんなんだよ?」
「はい! コレです!!」
そう言って笑顔で渡されたのは部活の説明が書かれたA4サイズのプリント。
……無駄にクォリティ高いな……だから生徒会でこき使われるんだぞ、お前。
で、部活内容は……なんじゃこりゃ?
呆けていると了華が高らかに宣言する。
「
いや、なんだよ記念日部って……なーおい、聞いた事ねーぞ。
こうして俺の高校最後の夏休みは、幼馴染の妙な部活に付き合わされる事から始まるようだった。
……勘弁しろし、マジで。
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