7月23日は何の日ですか?
「
ここ数日と同様に生徒会室を訪れると、いつも通り笑顔で挨拶してくる
はぁ……マジで早く飽きないかね、この部活。
だってよ、今日は土曜日だぜ? 夏休みで土曜日。それなのに部活ってどうよ?
「どうしたんですか
そんな俺の気も知らないで心配そうに此方を見詰めてくる幼馴染様。
……悩みの種はお前さんだよ、お前さん。
まぁ、言っても仕方ないから言わないけどな!!
「別に、だたちょっと暑くてボーとしてただけさ」
そう言うと、それは大変です! と慌ててエアコンの設定温度を弄り始める了華。
いや、ちょっと待とうか幼馴染様よ?
だからって設定下限の18度まで落とすのはやり過ぎだと
後で、こっそり戻しておくか。
「それで? お嬢様、今日は手紙を書くんだって?」
「はい! 今日は【ふみの日】。それも特別な【文月ふみの日】ですから!!」
改めて今日の予定を聞くと、了華は鞄からレターセットを出し始める。
様々な封筒や便箋、あとは官製はがきもあるな……何枚書く気なんだか。
「最近は滅多に手紙って使いませんけど、書くと楽しいですよ?」
「まぁ、携帯とかあれば使わないよな、確かに」
四六時中連絡が取れてしまう現代。
個人的な手紙が来るのは年賀状とかだろう……あとは変な広告。
「はい! だから、今日ぐらいは手紙を書きましょう!!」
という訳で、手紙を書き始めたんだが……。
ダメだな、コレ……書くことに集中し過ぎて会話がないわ。
いや、別に了華と喋りたい訳ではないんだが……息が詰まんだよ。
しかし、俺のそんな気持ちが伝わる事は無く、幼馴染様は力作を製作中だ。
ってか、何枚書く気だよ? 既に便箋4~5枚使ってるぞ!?
書き続けるその姿を無言で見ている俺に気が付くと、
「なっ!? は、
慌てた様子で便箋を隠す幼馴染様。
体全体で便箋を覆う了華に、俺は肩を竦める。
「見ねーよ。てか、見えねーよ。そんな細かい字でびっしり書かれたら」
「そ、そうですか? ならいいんです……良かったです」
ホッとした様子で一息つくお嬢様。
一体誰宛てに書いてるんだか……あ? 別に気にしてる訳じゃねーし。
さて、俺も真面目に仕上げるかねぇ。
暫く集中して書いていると、
「
少しソワソワした様子でそんな事を尋ねてくる了華。
おう、自分は隠しておいて俺には訊くとか流石ですわ幼馴染様。
まぁ、隠す必要もないので教えてやるけど。
「お嬢様だよ。お嬢様に書いてる」
「!? わ、わ、私ですか!?」
何故にそんなに驚くのか。そして何故、顔を若干赤らめる?
まぁ、了華の奇行は今に始まった事ではないので放置だが。
「そうそう、お嬢様だよ~」
「嬉しいです、
「いや、それは待てよ!?」
思わず出た俺の言葉にきょとんとするお嬢様。
いやいやいや、何故に俺の手紙如きを家宝にするのか……。
やっぱりこの幼馴染様面倒だわ。
その後、絶対に家宝なんかにしない様に言い含めて、手紙はようやく完成した。
了華は最後まで渋ったが、なら手紙を出さないと言ったらあっさり折れた。
……そんなに欲しいか、俺の手紙。
あ? 手紙の内容? 暑中見舞いだよ、暑中見舞い。時期的に丁度良いだろう?
出来上がった手紙を持って近くのポストへ。
にしても暑い……あぁ、海に行きてぇ。
海の記念日はってもう終わってんじゃねーか【海の日】!! 畜生!!
……サクッと投函して早くエアコンの効いた生徒会室に戻ろう。
そう思ったんだが、
「あれ? お嬢様は手紙ださねーの?」
何故か手に何も持っていない了華。
あの大量に書いた便箋は何処へ消えた?
その言葉に少し焦った様子で応じる幼馴染様。
「え? あ? 私は後で! 後で出します! ほ、ほら、書き過ぎて切手が足りなかったんです!!」
う~ん、少し怪しいがあの量だ。そういう事もあるかと納得する。
「よし、じゃあ、郵便局に買いに行くか切手」
「……え?」
「だって必要だろう? それに今日はこの日の記念の切手もあるらしいぞ?」
そう言って俺は携帯画面を了華に見せてやる。
さっきなんとなく調べたらホームページで紹介されていた。
毎年この日の前後に記念切手を発行しているらしい。
「うわぁ~、可愛いですね、
「だろう? 記念にもなるし記念日部的には買うべきだと思うんだがどうだろうか、お嬢様?」
「買う! 買います! 買いに行きましょう!! 今すぐ!!」
こうして夏の暑い昼下がり、俺達は郵便局を目指すのだった。
【部活メモ】
7月23日
◎文月ふみの日
1979年に当時の郵政省が毎月23日を「ふみの日」として制定。
理由は2(ふ)3(み)の語呂合わせによる。
そしてその中でも7月は旧称が【文月】な為、7月23日を特別に【文月ふみの日】としてイベント等を開催している。毎年発行される記念切手もその一環。
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