7月31日は何の日ですか?
「おはようございます
生徒会室を訪れるといつもの様に笑顔で挨拶してくる
あぁ、7月も終わりか……それはつまり夏休みが約4分の1消費されたって事だ。
はぁ~俺の輝ける高校最後の夏休みが……。
畜生……彼女作ってイチャイチャしてぇ~なぁ~! とか思っていると、
「どうしたんですか、
心配そうに様子を窺ってくる幼馴染様。
おう、俺の夏休みを奪った元凶がよくもぬけぬけと……まぁ、いいけど。
「いや、何でもねーよ。で? 今日はどうなさるんでお嬢様?」
よし、とりあえずさっさと今日の部活を終わらせちまおう。
そして、街へ遊びに行こう。未だ見ぬ彼女候補を探しに!
「ふふふっ~。今日はですね~こんなのを用意しました!」
俺がそんな事を考えているとは全く気付かない幼馴染様は、ニコニコと楽しそうな様子で机の上に古めかしいミニトランクを乗せた……なんぞコレ?
「これはですね、蓄音機なんです
その正体を悩んでいると、あっさり答えを教えてくれる了華。
あぁ~、なるほど。という事は今日の記念日はアレだ。
「【蓄音機の日】か、お嬢様」
「そうです
言いながら嬉しそうにミニトランクの蓋を開ける幼馴染様。
中には回転盤とその上に置く針の付いた装置……おぉ、何か少しワクワクするな。
「どうです
今では珍しい蓄音機の構造を見ていると、胸を張り得意げに説明し出す幼馴染様。
そうかぁ~、しかし説明をされても
所詮は骨董品。興味のある奴だけが楽しむ世界って事を覚えておこうな、お嬢様。
――といった感じなんですよ、
息を弾ませながら同意を求めるように笑顔を向けてくる幼馴染様。
お~凄い凄い。あ? 説明? ちゃんと聞いてたに決まってんだろうが。
ようは古くて珍しい凄い蓄音機って事だ。うん。
「じゃあ、
そう言っていそいそと準備を始めるお嬢様。
レコードをセットし、その上に針を置くと回転盤がゆるゆると回り始めた。
流れるのはクラシカルな旋律の緩やかな音楽。
生徒会室は瞬く間に数十年前の懐かしい音色に満たされていく。
暫くの間、目を瞑りセピア色の音に身を任せる。
蓄音機の事は全く知らないが、心の落ち着くいい演奏だ。
了華が夢中になるのも少し分かる気がした。
レコードの再生が終わると、キラキラとした目を向けてくる了華。
「どう? どうでした
「そうな、すげー懐かしい感じだったわ」
「この音色の良さが分かるとは流石ですね!」
何が流石なのか皆目分からんが、嬉しそうだからまぁ、いいか。
しかし、本当楽しそうに笑うねぇ、幼馴染様。
そんな事を思いながらその姿を眺めていると、
「いつかこれを聞きながら恋人と紅茶を飲むのがささやかな夢なんです……」
と恥かしそうに俯いてそんな事を告白してくるお嬢様。
……あまりに唐突な爆弾発言に思わず咳き込みそうなったじゃねーか。
てか、何なんだ昨日からこの幼馴染様は!?
アレか!? 恋人がいない俺への嫌がらせかお前!?
「ところで
しまいにゃ何て事を訊いてくるのか!
あ? いねーよ! この夏作る予定だったんだよ! 畜生め!!
「……そんなもんはいねーよ」
……正直に答えた理由? 嘘ついたら面倒だからだよ!
これで見栄張っているとか言ってみろよ?
誰か教えるまで絶対しつこく訊いてくるからな、この幼馴染様は!
「そ、そうなんですか! 良かったです!」
その答えに今日一番の笑顔を向けてくる了華。
おう……これはどう解釈するべきなんだ、おい?
アレか? 年齢=彼女無い歴の俺を馬鹿にしてんのか!?
って、何を告白してんだ俺は馬鹿か、クソッ。
「ど、どうしたんです、
「あ、怒ってねーよ? これっぽっちも」
そう、怒ってない。怒る訳がね―じゃねーか。
「そうですか? ならよかったです」
心配そうにしつつも納得して微笑む了華。
この表情もコイツに恋人が出来たら、俺は見れなくなるのかね……。
チッ……そう思うとなんか微妙にイライラしてくるのは何故だ。
そういえば、あの手紙も結局誰にやったか分からず仕舞いだし……。
だぁ~、もうっ! お嬢様のせいで妙な事ばかり考えちまうじゃねーか。
あぁーあ、お嬢様、マジ面倒!!
【部活メモ】
7月31日
◎蓄音機の日
1877年のこの日、エジソンが蓄音機の特許をとたそうな。
因みに蓄音機はエジソンの三大発明の1つに数えられている。
残りは映写機と電球。
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