8月1日は何の日ですか?
「おはようございます、
生徒会室を訪れるといつもの様に笑顔を向けてくる
今思えば、何でお嬢様は俺にこれほど無防備に笑いかけてくるのか。
俺なんかじゃなくて、きっと他に向けるべき相手がいるだろうに。
「どうしたんですか、
そんなことを考えていると、心配そうに見つめてくる了華。
チッ……昨日の事があって変に意識しちまってるじゃねーか、俺。
落ち付け、クールにいこうか
「いや、なんでもねーよ、お嬢様。さ、今日も張り切って部活をしますか!」
「…………」
そう返事をする俺に訝しげな視線を向けてくる幼馴染様。
あーもー気にするなよ! てか見つめてくるな!
「どうしたぁ~、お嬢様? それよりほら、今日の部活、部活!」
「やっぱり今日の
クソッ……普段はぽけぽけ姫のくせに変なところで鋭いな、この幼馴染様!
大人しく話題に乗ってこいよ!
「あ? いつもと同じだよ同じ。で? 今日は何するんだ?」
「……なら、いいんですけど。……今日はですね
俺の言動を怪しみながらも机の上に段ボール箱を乗せる了華。
中には様々な花火が詰まっていた。
またえらく買い込んだな……てか花火かぁ。恋人としたら楽しんだろうな……。
って、今は部活に集中だ。また了華に不審がられるからな!
という訳で、俺達は花火をするために校庭へ向かうのだった。
さて、しかしだ……昼間から花火なんかできる筈が……。
「じゃあ、何から始めます、
とか思っていたらこの幼馴染様、しっかり昼間用を用意していなさる!
そして先程までの俺への疑念はどこへやら。
テンション高めに早速、花火へ点火するお嬢様。
「いきますよ、
いきなりそんな大物からやるのか、幼馴染様!?
普通、もっと軽いやつからするだろう! ロケット花火とか!
そうしている内に火は導火線を伝い、筒の花火本体へ。
次の瞬間、ボンッという音を立て青空へ打ち上げられる色とりどりの
上空の風に乗りふわふわと沈んでくるそれを見上げていると、
「……意外と地味ですね……次、次はぬいぐるみです」
もう見飽きたといった感じで、新たな花火の準備に取り掛かる幼馴染様。
いや……最後まで見ようぜ……。
てか、昼間の花火に派手さを求めるなよ、お嬢様。
了華の移り気の早さに呆れていると、再び響く破裂音。
憐れ大空へ旅立つ猫のぬいぐるみ。
……いや、アレにしてみれば見事脱出できたと、喜ぶべきところか?
って、なに考えてんだ俺は……あ~、やっぱり色々おかしいわ。
「むぅ……ダメですね、
「いやいや、結構楽しいと思うんだが? ほら、猫のぬいぐるみだぞ」
丁度いい具合に落下してきたそれを手に取り、了華に放ってやる。
受け止めると、両手で目線の位置まで持ち上げ、マジマジと見つめる幼馴染様。
「……あんまり可愛くないですね……火薬臭いですし」
「そこは突っ込むなよ、お嬢様」
しかし不満を言いつつ、大事そうに段ボール箱にしまうのは何故なのか……。
なんだろう? やっぱり気に入ったんだろうか?
「最後は……これにしましょう!」
そうして了華が手に取ったのは小さな平独楽の様な花火。
うん? それって……いや、ちょっと待て!
しかし、止める間もなく了華は地面に置いたそれを数個まとめて着火。
次の瞬間、シューッと鋭い音を立てながら鼠花火がお嬢様の周囲を回り始める。
「…………!!」
目を大きく見開き手をパタパタさせて慌てる幼馴染様。
なにやってんだこのバカッ!
急いでバケツに用意していた水を地面にぶちまける。
火が消えて、濡れ鼠へと姿を変える花火たち。
一瞬の出来事に、きょとんとした表情でその場に立ち尽くす、お嬢様。
その顔があまりにも間が抜けていて、俺は思わず声を上げて笑ってしまう。
「あ、やっと
するとニッコリと笑顔を向けてくる幼馴染様。
……マジか……何やってんだ俺は……思わず恥かしくり顔を背けると、クスクスと笑う了華。
「何の悩みか分かりませんが、私でよければ相談して下さい。幼馴染なんですから」
微笑みながら優しい目線を向けてくるが……悩みの原因はお前なんだよなぁ……。
俺の気持ちを少しは理解してくれませんかね……あぁーあ、お嬢様、マジ面倒!
【部活メモ】
8月1日
◎花火の日
・1948年に戦中に禁止されていた花火が解禁された日。
・1955年に、東京の花火問屋で大規模な爆発事故があった日。
・世界一の花火大会とも言われる「教祖祭PL花火芸術」の行われる日。
と偶然か必然か何かと花火に縁のある一日を記念して制定されたらしい。
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