8月2日は何の日ですか?
生徒会室を訪れると、
なにか呟いてるみたいだが……俺に気付いてねーな、コイツ。
いつも笑顔で挨拶してくるのに珍しい。
「おう、おはようお嬢様? どうした気分でも悪いのか?」
なんで俺から声をかけたんだが、それに驚いた様子で顔を上げる幼馴染様。
おいおい、マジでどうした?
「は、
「いつもと同じ時間なんだが?」
「そ、そうですか?」
硬く緊張した様子で笑顔を向けてきた了華は、そう言うと再び俯いてしまう。
本気でなにがあった……。
いや、待て……以前、似たような反応を別の誰かで見たことがあんぞ?
それはいつも馬鹿やって仲良くしていた女友達の話だ。
ある時、急によそよそしい態度になってどうしたかと思えば彼氏が出来たと……。
その様子に今のお嬢様は似ている……気がする。
マジか!? どこのモブだ!? 了華に手を出したのは!
あ? いや、なに怒ってんだ俺は……コイツが誰と付き合おうと関系は……。
そんなことを悶々と考えていると、
「は、
真剣な表情でこちらを見つめてくる了華。
……ほらきた。このあとは、私もう部活はできません、とか言うに違いない。
だよな! 彼氏とキャッキャするのが大事だもんな、畜生め!
「今日ですね……今日なんですが……」
続く言葉は、私告白されましたってか?
カァーッ、リア充め! 俺の計画は邪魔しつつ自分はちゃっかりか!
返せ! 俺の夏休みを返せ!
「……【パンツの日】なんです!」
言うと真っ赤になった顔を両手で隠し再び俯く幼馴染様。
……えっと、少し待とうか? 今なんつった、コイツ?
空耳じゃなければパンツとか聞えたんだが……?
「……悪い、お嬢様。何だって?」
すると顔を上げ信じられないといった感じで目を大きく見開き、次の瞬間には涙目になる了華。
「もうっ! だから今日はパンツ! 【パンツの日】なんです!
あぁ……聞き間違いじゃなかったか……って何を落ち着いてんだ俺は!
おいぃ!? 待てこのポンコツ幼馴染様! なにスカートに手をかけてんだよ!?
あーもうっ! なんでそういう結論に達するのか!
クソがっ! お嬢様、マジ面倒!
そのあと額にチョップ一発でどうにか正常に戻った幼馴染様。
マジ焦った……唐突に暴走するなよ、お嬢様。
あ? 了華のパンツ? 見てねーよ! 見るかってんだよ!
しかし……アレだ……セーラー服から透けて見える下着は黒だ……それで察しろ。
「……ご、ご迷惑をおかけしました」
「本当な! いきなりなにを始めるかと思ったぜお嬢様」
「だって、だって、こんな日が記念日にあるなんて思わなかったんです」
言いながら再び赤く染まる顔を両手で隠し俯く了華。
つまり様子がおかしかったのは全てこの日のせいか。
色々考えて、悶々とした俺は何だったのか。
「今日は【ハーブの日】でもあんのに……なんでそっち選ぶよ」
「あ、アレを見たら頭がいっぱいになってしまって……だ、だから今日のアレは頑張ったんです……俗に言う勝負なんとかってヤツです!」
「テイッ!」
「痛ッ!? な、なんで叩くんです!?」
それは自分で考えろ幼馴染様よ。そして、いらん情報をありがとう。
「はぁ~今日は普通に【ハーブの日】を祝おうな? 丁度、お嬢様が持ち込んだティーセットにハーブティーあるし」
「そ、そうですね……そうしましょう」
そうして生徒会室で二人、大人しくハーブティーを飲む。
さっきから焦ったり、慌てたりしっぱなしだったんでリラックスできていいな。
ボーッとしながらお茶を楽しんでいると、
「はぁ~、でも
なんてことを訊いてくる幼馴染様。
欲しいもの、欲しいもの、欲しいものね……。
「……彼女」
ハッ!? って、俺、今なんて言った!?
気が緩み過ぎて、思わず馬鹿なことを口走っちまった気が!?
慌てて了華の方を見ると、きょとんとした表情で俺を見つめ返してくる。
そして、無言のままハーブティーを一口飲み、
「
ループした!? あ、いや聞こえてなかったのか? しかし……そんな筈は。
だぁ~もう! どっちだよ!? 今はそのにこやかな笑顔が恐えぇよ!!
「あ? いらん、いらん。気にするなって」
よし、なかったことにしよう。その方が皆きっと幸せだ!
だから、だからな、幼馴染様よ、その笑みは止めてくれ!
目が笑ってなくて超恐いから!
くっそ……あぁーあ、お嬢様、マジ面倒!
【部活メモ】
8月2日
◎パンツの日
8(パン)2(ツ)=パンツの語呂合わせ。複数の下着メーカーが採用している。
◎ハーブの日
8(ハ)2(―ブ)=ハーブの語呂合わせ。ハーブを使った化粧品会社が制定。
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