7月20日は何の日ですか?
「さぁ、
夏休み初日、生徒会室を訪れた俺を出迎えたのはそんな幼馴染様の第一声。
はぁ~。高校最後の夏休みに普段の時間通り登校して何やってんだ俺は……。
てか、朝っぱらからテンション高過ぎんだろう
あ? 俺は逆に低過ぎるって? ほっとけ、低血圧なんだよ。
「
そんな俺の気持ちを察することなく話を続ける了華。
調べたよ。さっきトイレのついでに携帯でな。文明の利器万歳!
「アレだ、【月面着陸の日】だろ確か?」
俺のその答えを聞き予想外だと言わんばかりに目を丸める了華。
そして、突然俺の両手を握ったかと思うと、目をキラキラさせて見詰めてくる。
「
「お、おう、なんだよお嬢様?」
「真面目に部活に取り組んでくれて私は嬉しいです!」
「そ、そうか。で? 今日は何すんだよ、お嬢様?」
「はい! 今日はこれで遊びましょう!」
言いながら近くにあった台の白い布を取り去る了華。
現れたのは――
――ビリヤード台?
は? ……何故にビリヤード台だよ?!
「如何したんですか
いやいやいや、色々端折り過ぎてんぜ、幼馴染様よ。
何がどうなって【月面着陸の日】が【ビリヤードで遊ぶ日】になるのか。
明確な説明が欲しいんだが。
そんな俺の気持ちが珍しく伝わったのか、あぁ! と笑顔で手を叩く了華。
「今日は確かに【月面着陸の日】ですけど【ビリヤードの日】でもあるんですよ!」
という訳で今日の部活は【ビリヤードの日】を記念する事になったのだが……。
「ところでお嬢様? ビリヤードのルールはお知りで?」
「知りません!!」
だよな! てか、それなのに何故自信満々のドヤ顔なのか。
まぁ、俺も知らんけどな。
「でも、とりあえず玉を棒で突いて穴に落とせばいいんですよ!」
と、なんとも大雑把なルールを恥かしげもなく披露する幼馴染様。
そして台の方を向き、棒で玉を突こうとして、カスッ、ガリガリッ。
あ、台に張られた布を破きやがった……。
無言で此方を振り返った幼馴染様は涙目である。
おう、俺もビックリだわ。まさか一発目で壊すとか。
「
肩を落としマジ泣き一歩手前まで涙を溜める了華。
いやいや、このまま泣かれたらすげー面倒なんだが……よしっ!
「悪い、お嬢様。俺ちょっとトイレ行ってくるわ!」
俺の言葉にポカンとする幼馴染様。その隙に生徒会室の外へ。
あ? 逃げたんじゃねーよ。人聞きわりーな。少し調べものだ。
暫くして戻ると、了華は必死にビリヤード台を修理していた。
しかしだ、幼馴染様よ。
ガムテープ補修はあんまりだと流石の
その姿に呆れていると、
「
俺に気付いて笑顔を向けてくるお嬢様。
そして、再び棒を握り玉を突くと、カスッ、ガリガリガリッ。
うわっ、すっげーデジャブ。
再び涙目になる了華……あぁもう、仕方ねーな。
「なぁーお嬢様よ?」
「ぐすっ。な、何ですか
「今日は何の日か知ってっか?」
その質問にきょとんとなり、何かを必死に思いだそうとする了華。
あ、調べたけど忘れてんなコイツ。
「10秒…………………5、4、」
「待って! 待って下さい!!」
「無理でーす。3、2、」
「意地悪!
「1、0。で? 答えはお嬢様?」
「……忘れ、ました」
悔しそうに少し拗ねた様子で顔を背ける了華。
ふっ、勝った。じゃねーよ、馬鹿か俺は。機嫌損ねてどーすんだよ。
「そうか、じゃあ教えるけどな、今日はさ【ハンバーガーの日】でもあるらしいんだわ。だから今から食べにいかねぇー? 部活動の一環として」
その言葉に目を丸め、意味を理解すると瞳を輝かせる了華。
「この部活はその日の記念日を色々祝うんだろう? ならそれもありじゃね?」
「そう、そうですね
「おう、なら準備してササっと街へ行こうぜー」
こうして俺達は昼食時の街へ繰り出すのだった。
あー幼馴染様の面倒見るのマジ疲れるわぁ~。
因みに了華のヤツ、ハンバーガーを食べるのは初めてだったらしい。
紙に包まれたハンバーガーを渡されて呆然とした姿は流石に笑ったわ。
箱入り過ぎんぜお嬢様。
【部活メモ】
7月20日
◎月面着陸の日
言わずと知れた人類の偉大な一歩が踏み出されたのが今日だ。
1969年のこの日、アポロ11号クルーは月面に降り立った。
◎ビリヤードの日
1955年のこの日、ビリヤード場を風俗営業法の規制対象外とする法案が成立。
つまり、日本でビリヤードが健全な室内スポーツとして認められた日だ。
◎ハンバーガーの日
ご存じ黄色いMマークが目印のハンバーガーショップの記念日。
1971年に第一号店をオープンしたのが今日だったりする。
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