7月29日は何の日ですか?

「おはようございます、はじめ! 今日も来てくれて嬉しいです!」


 生徒会室を訪れると、普段通りの笑顔で迎えてくれる了華りょうか

 昨日はあんな事になったが、やっぱり笑ってるのが一番だよ、お前は。


「おはよう、お嬢様。で? 今日はどうするんだ?」

「ふふふっ。今日ははじめが喜ぶものを用意しました!」


 そう言って了華が机の上に乗せたのは白いクーラーボックスだ。

 確か本日の記念日に食べ物関係は無かった気がするが、一体何だ?

 若干、不安を感じていると、蓋を開け中身を披露する了華。

 

「じゃーん! 最高級和牛ですよ、はじめ! A5とかいうヤツです!」


 中を確認してみると、そこには確かに見事な霜降り牛肉の塊が!

 おい……マジか。てか、何で牛肉って……そうか!


「今日は【肉の日】か、お嬢様!」

「そうです、はじめ! 大正解です!」


 俺の答えに満足気に頷く了華。

 いいねぇ~。こういう部活ならはじめさんも大歓迎だわ。

 よし、早速食べるとしますか!


 という訳で、いつもの様に調理室へ。

 了華と二人エプロンを着けたら、牛肉の塊を食べやすい大きさに切り分けていく。

 おぉ~、流石は高級肉。包丁がスーッと入るな。

 よし、この調子でじゃんじゃん切っちまおう!


 因みに、お嬢様は見学だ。

 あ? 包丁とか危なくて持たせられねーよ。かき氷での不器用さを思い出せ!

 エプロンを着けた意味? その方が可愛いからだが?


 そうして、肉と格闘する事約一時間、ようやく全てを切り終えた。

 ってかブロックを見た時から予想はしてたがかなり多いな……。

 大皿5枚分とかどんだけだよ……食べ切れるか?


はじめぇ~、こっちもお肉を焼く準備が出来ましたよ~」


 そんな事を考えていると、お嬢様の呼ぶ声が。

 おぉ、姿が見えないと思っていたら、珍しく手際が良いじゃないか。

 じゃあ、焼くとしますかねぇ~っと振り返ったんだが……。


「なぁ、お嬢様? それは何かな?」

「え? お肉を焼く為の道具ですけど?」


 俺の問い掛けにきょとんして小首を傾げる幼馴染様。

 おう、確かに、確かにそれは焼き肉に使うだろうさ……。

 けど、けどな……何が悲しくてA5ランクの肉をホットプレートで焼かねばならんのか……まぁ、お嬢様が折角準備してくれたから使うけどな。

 しかし、どうせなら炭火で焼きたかったぜ……。


 いい感じに加熱されたホットプレートに、牛肉を一枚、一枚乗せていく。

 その度に部屋中に響くジューッという音と、広がっていく芳ばしい香り。

 ヤバい……これはヤバい!! 物凄く美味しそうなんだが!


はじめ! はじめ! 焼けてる! そこ焼けてます!」


 目をキラキラさせながら、そう指示を出してくる幼馴染様。


「お? これか? いい感じだな。じゃあ、お先に」

「あぁ!? 私の為に焼いてくれてたんじゃないんですか!?」

「自分の肉は、自分で育てる。これ焼き肉の常識だぜ、お嬢様?」

「う、嘘です! そんなの嘘です~! 私にも焼いて下さいよ~!」

「ははっ、次な次」


 と言いつつ再び、焼いた肉を口へ運ぶ俺。

 それを見て信じられないと目を見開き、抗議してくる幼馴染様。


「は~じ~め~! ずるいです! 自分ばかり!」

「てか、自分で焼けよ、お嬢様」

「油がパチパチして怖いんですよ!」

「そうかー。ホットプレートとかで焼くからだぞー。今度は炭火で焼こうなぁー」

「もうっ! 意地悪しないで下さい!」


 うん、あんまりからかうと面倒なんでそろそろ食べさせてやるか。

 そう思って皿に肉を入れると、嬉しそうに頬張る幼馴染様。

 はじめが焼いてくれたお肉は特別美味しいですって、お前……。

 あ~も~マジ面倒臭いなぁ~お嬢様は!


 そんな感じで食べ続け、気付けば大皿5枚分全てを二人で平らげてしまっていた。

 いやー、食べ過ぎたわ……もう暫く肉はいいかな。

 なんて事を考えていると、


はじめ、これでこの夏は夏バテになりませんねぇ。沢山遊べますねぇ」


 そう言って微笑んでくる幼馴染様。

 ……あぁ、やたら高級な肉を買ってきた理由はそこか。


「そうだなぁ~。てか、お嬢様よ、遊ぶなら俺は普通に遊びたいんだが?」

「え? どういう事ですか?」

「いや、お嬢様は俺と遊びたいから部活を作った訳だろう?」

「そうですね……何か理由を付けないとはじめは構ってくれませんでしたから」

「なら、もう普通に遊ぶからさ、わざわざ部活をしなくてもいいと思うんだが?」


 そうすればもっと色々な所へ遊びに行けるのだ。

 それこそ海や夏祭り、花火見物なんかにな!

 しかし、その提案に了華は横に振る。


「ダメです、はじめ。無理して作った部活だから真面目にしないと内申点が下がっちゃいます」

「何でそこで無理したし、お嬢様!? そして内申点とか最悪じゃねーか!」

「ふふっ、だから明日もまた来て下さいねはじめ! 待ってますから!」

「あぁ~、分かったよ、お嬢様」


 はぁ~どうやらまだまだこの妙な部活は続きそうだぜ、全く。

 

【部活メモ】

7月29日

◎肉の日

 毎月29日は肉の日! 2(に)9(く)=肉の語呂合わせ。

 ちゃんとスタミナを付けて暑い夏を乗り切ろう!

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