自然の無い森

道の両脇に木々が並んでいます。

このまま進んでいけば、森に囲まれた長閑な街に辿り着きます。

自然に囲まれた静かな場所で、動物もいっぱい居て……。

旅に火照った足を冷やすには格好の街でした。

ところが。


”この先、自然はございません”


思わず首をかしげてしまいました。

突然現れた木の看板にはそう書かれていました。

はて。一体どういうことでしょう。

既に辺りは、森と言っても良い雰囲気だと言うのに。

「旅人さん。一体この先に何を求めているんだい?」

突然声をかけられて、私は被っていた帽子を落とす程驚いてしまいました。

どうやら、看板の陰で木こりの方が休んでいたようです。

何を求めているか……。

なんてったって、休息でしょうか。

木々に囲まれて思いっきり深呼吸して。

泉に足を浸しながら、果物なんて食べれたら最高です。

でも、私の悪い癖が出てしまいました。

私は、ちょっとだけカッコつけたがり屋なのです。

なので、こう答えてしまいました。

自然を求めてます、と。

「ああ、それなら辞めといた方が良い。この先に自然なんて無いよ」

ところがやっぱり。

木こりは看板と同じように答えました。

でも、私も腑に落ちません。

こんなにいっぱい木が生えているのに。

「ここに生えている木は、人が植えたのさ。そしてこの先にある街を囲む森も全部人が植えたもの。……それは自然じゃないだろう?」

その時、私のお腹がきゅるるるーと鳴りました。

……カッコつけた手前、恥ずかしさで死にそうです。

「ああ。でもあんたは自然だな。うん。街に入ってすぐのお店のサラダが絶品だよ」

そう笑われてしまいました。

私は手短にお礼を言うと、急いで街を目指しました。

自然と歩みは早まりました。

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