花の無い花屋

その花屋には、よく道端に生えている赤い花ですらありませんでした。

「でもね、お客さん、ここには世界中探したって見つからない花があるんですよ」

でも、真っ白な店内に座る若い画家は得意気にそう言いました。

「さあ、どんな花が欲しいですか? あなたの思うがままに言って下さい」

果たして、枯れない花は、花と言えるのでしょうか?

「うちの花だって枯れますよ。その証拠に何度も来てくださるお客様がいます」

……だって、それは絵でしょう?

「飽きたら、それは枯れた事と同じこと。また新しい花が欲しくなるんです」

それは、きっと花じゃない……とも言えず。

かといって、じゃあ花って何? とも言えず。


結局私は何も買わずに、その店を後にしました。

道端に咲く、赤い花達を見つめながら。

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