ククルの断片紀行文。

水上 遥

汽車の来ない駅

寂れたホーム。

黒く煤けた駅舎。

居るのは楽しげに咲く花ばかり。

その駅にはもうずっと汽車は来ていないようでした。

「でもね、あなたが来たでしょ?」

そう言って、ボロボロの制服を着たおじいさんは笑いました。

汽車が来ないのに駅なのでしょうか。

「駅ですよ。旅人が来るかぎり」

そう言って、背筋の伸びた駅員さんは笑いました。

「さあ、切符はきりました。いってらっしゃい!」

「ありがとう。いってきます」

その声を背に、私は歩き出しました。

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