ワープ

「つまり君は」

 男は言った。

「何度も過去に戻ってやり直している、ということなのか」

「そう。そしてあなたは」

 女は言った。

「何度も未来にいってやり直している、そういうことなのね」

「そう」

 二人がそれに気づいたのは、何度でも出会うからだった。それにもかかわらず、お互いにいつも違うことをする。他の人々は、最初は全く同じ行動をするのに。

「せっかく条件を変えてやりおなそうとしても、あなたという不確定要素があっては困るの」

「それは僕だって一緒だ」

「でも、なぜ未来を変えるの」

「過去を何回変えても、未来で世界が滅亡してしまうことが分かった。だから、未来のほうを変えるしかない」

「つまり私たちの時代が滅びるのは、あなたの時代のせいということ?」

「そうなるね」

 女は考え込んだ。

「考えたんだけど」

「言ってくれ」

「私は過去を変えたら、変えられた未来に生きる。でも、あなたは未来を変えても、自分の時代は変わらないでしょ」

「まあ、そうだね」

「私のほうが優先されるべきじゃない?」

「うーん……」

 男は首をひねった。

「そうは言うけれど、僕たちは自分たちの子孫を生み出すものとして責任を感じている。それに対して君は、自分たちのためというエゴじゃないかい?」

「うーん……」

 女も首をひねった。

「とりあえず、こうしないか。二人で協力してみるパターンだ。新しい何かが生まれるかもしれない」

「そのポジティブさにはジェネレーションギャップを感じるわね。五世代くらいかな?」

「『あれ』を乗り越えられたら、君の世代もポジティブになるかもしれない」

「やっぱりポジィティブ。あなたたちのせいでこっちは苦労しているっていうのに。ついていけない」

 こうして、世代を越えた議論は平行線をたどり、やはり未来で世界は滅びるのであった。

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