第二谷町線
谷町線に宇宙人たちが住み着いてはや二週間。
もちろん地下鉄は止まったままである。宇宙人たちは戦闘の中止と引き換えに安全の保障を要求したが、交渉はまとまらなかった。通勤、通学に支障の出る人々は、谷町線の奪還を求めた。御堂筋線利用者からも不満が出ていた。元々乗客が多いうえに、谷町線から人が流れてきたのである。ただでさえ戦闘自体が邪魔なのである。社畜たちは特に、一分でも多く働きたいため遅刻のリスクを減らしたがった。
大阪市は仕方なく、「第二谷町線」の建設を決めた。現行の谷町線に並行する形で新路線を作るのである。それはそれで議論を巻き起こした、宇宙人が敗北したら無駄路線になるのではないか。予算はあるのか。どうせ予算が膨らんで政府に泣きつくんだろう。谷九の乗り換えが今以上に遠くなるんじゃないか。
そんなわけでまず、上本町と第二谷町線の乗り換えがスムーズになることから決定した。
ついでに天王寺も。文の里と昭和町とでも乗り換えできるように。喜連瓜破を読みやすく。河内長野まで延長を。様々な要望が出た。
「既存路線の回復以外の計画は現段階では無理です!」
大阪市はきれた。
第二谷町線は計画通り建設された。予算は大幅にオーバーした。
「へー、だから地下鉄がぴったり隣り合って走っているんだね」
「西きれうりわり駅」の表示板を見送ると、小さい子供は窓の外を見るのをやめて車内に向き直った。
「地球人は面白いことを考えたものだ。おかげでお父さんも通勤は楽だったよ」
「また働いてた頃の話する。徴労って二年ぐらいでしょ?」
「ああ。もう二度と働きたくないね」
電車は暗闇の中を進んでいく。宇宙人の子供は、また窓の外を見た。もうすぐ、平野背戸駅に到着する。
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