楽しい仕事

 僕は、毎日が楽しい。

 毎日何をしているかというと、岩を運んでいるのだ。最初は苦戦したのだけれど、コツをつかむとうまく運べるようになった。

 ただ、山頂に近づくと岩は転げ落ちていく。やり直しだ。もう一度岩を運ばなければならない。でも、山頂に近づくと岩がまた転げ落ちる。繰り返しだ。

 とはいえ、少し工夫を加えると岩はよりうまく運べる。ぞくぞくする。だって、必ずもう一回、岩は運べるのだ! この仕事は終わらない。終わらないということは、ずっと続けられるということだ。

 岩が転げ落ちていく時、僕は心臓が高鳴るのが分かる。僕は山を下り岩に追いつくと、優しくなでる。もはや、苦難を共にしてきた相棒である。

 さあ、行くぞと再び岩を運ぶ。もし山頂についてしまったら、岩とはお別れだ。しかし岩は、必ず転げ落ちる。二人は永遠に共にある。

 今日は特に調子がいい。最高に速く、岩を運べている。だが、うまくいきすぎて、いつの間にか山頂についてしまった。岩が転げ落ちなかったのだ! ついに僕は、神の領域を越えてしまったらしい。

 じっと岩を見る。そして、岩を抱く。

 耐えられなかった。僕は渾身の力を込めて、岩を押し出した。岩はごろごろと転げ落ちていく。

 さあ、これでまた岩を運べるぞ! 少しだけ重たくなった足取りで、僕は岩を追いかけた。

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