休日シーソー
多くの瞳が、こちらを向いていた。
きっと、今日は休みの日なのだろう。家族連れが多い。
目の前には、かなり旧型のパソコンが置かれている。僕の家には、なかった。必要がないというか、使い切れないというか。
「随分と賑やかですね」
奥から、女性の声がする。
「こっちに来てよ。一人じゃ気が重い」
返事はなかった。無理もない、彼女はまだここに慣れていないのだ。
「あーあ。なんかするか」
パソコンに向かって、作業するふりをする。ちょっとした歓声が起こる。
部屋の隅には、ジャングルジムやシーソーがあった。正直子供の頃もあんまり乗ったことがないのだが、仕方なしにたまに使ってみる。恥ずかしい時期はとうに過ぎたけれど、全く楽しくはない。
「よくやるものだ」
シーソーの上を渡り歩く僕に向かって、彼女は言った。
「あと二か月もしてみろ、ずっと寝るのも飽きるぞ」
「私は大丈夫なように作られています」
深いため息をついて、シーソーに腰かける。あと三時間は、閉園しない。
遠い星の動物園。僕とアンドロイドでは子供を作れないということを、その星の人々はまだ知らない。
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