「文学・純文学」を含む小説

――桜の舞う季節に、僕はもう、生きていなかった。 声もなく、鼓動もなく、 ただ風のように、その場所に立ち尽くしていた。 名前も、記憶も、ぬくもりも―― すべてを失ってしまって…

自分を無視する母との岩波文庫を巡るひと時の奇妙な交流。 ＊唐茄子かぼちゃ名義、「惑星と口笛」主催の文学コンテスト「ブンゲイファイトクラブ７（BFC7）」本戦参加作品。本作にて決…

戦争から80年。 撃たれた事も、斬られた事も、飢えた事も無い。死の恐怖など微塵も知らない。 そんな高校生が、果たして何を伝えられるのか……考え続けながら描いた物語。

あなたは忘れ物をしたことがありますか？ 筆箱や宿題を家に忘れたりなどの経験はきっと多くの人にあるでしょう。もし、そんな忘れ物達を届けてくれるお店があったら……。 このお話は…

ユートピアには、いつも影がある。 曖昧で恐ろしい、日常との境界線。

年に二度、私は祖母の家で親戚達と集う。 久しぶりに会う従兄妹たちと、冷たい朝の田舎道を駆ける。 いつも通り再会を楽しんでいた私は、ある冬の泊まりの最終日の朝に”微かな違和感“を憶…

異国を巡り、技術と自己を壊し尽くした雪舟は、 最後に“描かない場所”に世界の重さを見いだす。 一本の線が、生のすべてを語り始める瞬間を描く純文学短編。

それなり細々とやっていた作家：紺原泉火は、 契約している編集部の担当編集から『人の心を分かろうともしない横柄』と唾棄され軒並み縁を切られたことで、とあるカフェにて憂いていた。 …

盲目の噺家、宵隙が噺で世間を皮肉る。 宵隙の思い出話を主軸に物語が進行するため、初話から、藤兵衛が死んでるのが玉に傷だが⋯。 蓮根は有り難い食い物だが、穴が蓮根か、根が蓮根か…

45歳の男にとって、春の訪れは桜ではなく「てりたま」から始まる。 季節限定のハンバーガーをめぐる思索は、味覚を超えて、人生の欠落や充足、思考の余白へと静かに広がっていく。 てりた…

陸上部部長・佐藤風香は、想い人でもある幼馴染の背中に、初めて手が届かないと悟る。親友と幼馴染の間には夏の予感が漂っていた。少しずつ広がっていく「靄」は大会直前、風香の走りを止めて…

この暑さも、いつか物語になる。 三十一首の短歌を副題に綴る、三十一篇の「夏」のオムニバス。 灼けたアスファルト、縁石のぬくもり、病院の待合室、狭いワンルーム、雨の匂い。 「夏な…

　夜の京都・鴨川の長椅子で、若き畫家・鏡花はただひとり、月だけを描き續けている。 　SNSに投げ込んだ繪に返ってくるのは、溫度を失った贊辭の斷片ばかり。屆かぬ言葉と手應えのない稱…

2033年、月面にて宇宙のエラー"ホール"が発見された。 そのホールは、位置を示す三次元(X,Y,Z)、 時間を示す一次元(T)、そして確率を示す一次元(P)の 五次元(X,Y…

　絵が大好きな少年・アオと一風変わっているけれど愛らしいハンバーガーには挟まれた猫のぬいぐるみ『ソラちゃん』。 　幼い日の心細さも喜びも、そっと受け止めてくれた『ひみつのともだ…

子どもの頃に淡く交わした想い。 時を経て、再び出会った彼と私。しかし、過去の誤解や距離、現実の壁が私たちを隔てる。 一度も触れることのなかった恋。けれど魂は確かに響き合い、互いの…

「月が綺麗ですね。……数千年の間、貴方様を探しておりました」 ​不運続きのブラック企業社員・月神世一（つきがみ よいち）は、ある満月の夜、絶世の美女・結（ゆい）を拾う。 初対面の…

大学生のタロウは自分がどっちに進むのか、どうなろうとしているのかが掴めずにいた。その日、友人が自殺した。 不定期連載。

一日前にあったことを中心に（理念上は）毎日更新を目指すいわゆる〈日記帳〉です。ジャンルは固定してません。しかし筆者の趣味が読書・執筆・アニメ・映画鑑賞・テレビゲームなどインドアに…