「掌編短編」を含む小説

目が覚める。 いつもの朝。会社へ行く。 仕事は問題なく、毎日決まったルーティンをこなせば定時に終わる。面白くもなく興味もないような、生きるための糧を稼ぐための行為だ。 生きたいわ…

我が家には、奇妙な風習があった。 何故我が家だけなのか、何の為なのか、両親は何も教えてくれなかった。

夏期講習の帰り道。突然の豪雨に見舞われた私は、パン屋の軒先ん逃げ込んだ。それは、幼馴染の男子のうちで……。高校生の淡い恋模様です💖

何を話したらいいんだろう。 電車の中、不安で胸が満ちる。 マッチングアプリで女と会うことになった。 合流して酒を飲んで、上手く運べばそういう流れになるだろうなと思い必要な物を持…

偶然見かけた怪しげなサイト。『全自動回復スキル140,000円！あなたの体力を常に回復！』詐欺のような気もするが、疲れ気味の私はつい購入ボタンを押してしまう……。

仕事を辞めたがやる事がなく、寝て過ごしていたらいつの間にか十年が経っていた。 本当に何もしなかった。たまに備蓄していた缶詰やレトルト食品や店屋物を食べたり酒を飲んだりするくらい…

家の近くに野良猫がいた。 白と茶色の不細工面にもかかわらず、猫だからというだけで餌を与えられブクブクと太った醜い馬鹿猫である。 この猫について、街中で見かける際密かにトドと呼ん…

平成の時代に残された“消えかけた記憶”や“言葉にならなかった感情”。 それらがふとした拍子に呼び起こされ、物語として立ち上がる。 ──和歌とともに綴る、詩的で静かなホラー掌編集。

『あ』と『お』が喧嘩したから仲裁してほしいと、ひらがな国から調停官の『な』がやってきた。 助けを求められたのは、五歳になる息子、右際（うきわ）。 どうやら以前、『れ』と『わ』…

うすくじめじめとした木蔭に、じっと佇むようにある御影石でできた墓標は、かつては写っていた鋭利な彫り跡も群生した苔にすっかり埋もれて読みとることは難しくなって仕舞っている。

森へやってきた。 立て込んだ仕事がようやく片付いたため、一度都会の喧騒から離れ静かにゆっくり休みたかったのだ。あの資料突貫で仕上げたけど大丈夫かなぁと一抹の不安はあったが、もうi…

2021年、あの頃に執筆した掌編となります。

彼女は女の匂いをさせていた。 いつも見る講義、席は決まって一番前の三列目。今日こそは話しかけようと、勇気を振り絞り「おはよう」と声かけると、有象無象に返す内容と同じ、「おはよう」…

彼は暗い人間だった。 いつも自分の机に齧り付いて本を読んだりノートになにか描いたりしているのが常で、誰とも話したがらず、こちらが挨拶をしても軽く頷く程度で決して声を発しない、陰気…

一回二百万という高額につれられ、私は、私を産油国の王子に売った。 「皆様お待たせいたしました。遥々日本からやってまいりました少女が本日、挑戦者として夜戯に挑みます」 ご丁寧に…

きらきら町は、平成の大合併の際にできた町です。当時の市長が、せめて見栄えのよい名前にしようと、無理くりつけた名前を持っています。巫女も。魔法少女も、ヒーローも、敵役も、全員が苦し…

「日常の中の違和感」をテーマにした、140字連作小説。 呼吸、夕焼け、テレビ、暗がり、食器、知らない人の声、月の光。 何ひとつおかしくないはずの部屋に、少しずつ違和感が積もって…

私は思慮深いのである。 優れた洞察によってあらゆる事象の本質を見抜き、真理に辿り着く。固執せず、拘らず、中立中庸の立場で物事を眺め、それでいて路傍の石の如く目立たず、弁え、慎まし…