猫の鳴き声

海藤日本

猫の鳴き声

 ある夜、車の免許を取得したばかりの若者五人が、ドライブで地元から約一時間程離れた場所にある、あの有名な心霊スポットに行った時に起きた話である。

 

 周りは森に覆われており、勿論この近辺に家などはない為、人通りは全くない。

 男達は車を停め、暗い森の夜道をライトで照らしながら歩いていた。

 すると突然、猫の鳴き声が聞こえてきた。

 どうやら、何かと喧嘩しているような、とにかく何か警戒しているような鳴き声であった。

 その鳴き声は近くから聞こえてくる。

 しかし、若者五人が何処を探しても猫の姿は全くない。しばらくすると、鳴き声は止んだ。

 

 そうしていると、目的の場所へと辿り着いた。そこは、今は封鎖されているトンネルである。少し高めの柵があるが、よじ登れば中へと入れる。五人は柵に手をかけた瞬間、また猫の鳴き声が聞こえた。

 五人には、それがまるで何かを警告するかのように聞こえた。

 五人は柵に登るのを止め、引き返すことにした。しかし、何処を探してもやはり猫の姿は何処にもない。

 五人は車へと戻り、その場を後にした。

 帰り道にコンビニに寄り、飲み物を買った五人は車へと戻る時、一人の男性が何かに気付いた。


「ん? フロントガラスに、なにかついてない?」

 

 そう言い、五人がフロントガラスをよく見ると、そこには赤ん坊サイズの小さな足跡が、ポツポツとついていた。

 一人の男性が、急いで持っていたタオルで、その足跡を拭いたが全く落ちない。


 「まさか……」


 男性は車の中へと入り、今度は中から足跡を拭いた。すると、足跡はすっと消えた。

 どうやら、赤ん坊は車の中に乗って来ているようだ。そして、五人はある事を思い出した。それは、あの場所で散々聞こえてきたあの鳴き声は、猫ではなく、赤ん坊の泣き声だったことに。

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