概要
「秋」は人の感情を乱すとして違法になった。
禁止資料室で働く青年・向井実は、ある日AI職員ユイと出会う。
禁じられた季節に惹かれる彼女。封じ込めた郷愁に揺れる彼。
――感情のない世界で、彼らは“秋”を見つけに行く。
失われた季節と、禁じられた愛を描く近未来SF。
※路地猫みのる先生の 自主企画『秋の短編小説〜夜のお供に読み物を🍵🍡』参加作品。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!秋を愛したAIと、主人公のディストピア・ロマンス作品です!
西暦3016年、人の感情を揺らしすぎる「秋」は国家により禁止された。
この作品は、感情の均衡を至上とする冷徹な管理社会を舞台に、失われた季節への愛を取り戻そうとする一人の青年と、感情増幅AIのヒューマノイドが織りなすディストピア・ロマンス作品です。
主人公・向井実(みのる)は、秋の資料を扱う地下室で、自身の悲しみと郷愁を増幅させるAI、ユイと出会うことになる。
無感動に生きてきた実(みのる)の凍てついた心は、禁止された「秋」に異常なまでに執着するユイの「情熱」に次第に強く惹きつけられていくことに……
効率と安定が感情の美しさに勝利した世界で暮らす二人は、どのような運命を辿っていくのか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!秋を探した。互いが大切になった。 だからふたりは、社会の敵になった。
西暦三〇一六年、秋は禁止されました。
秋に関わる物事は秘匿され、その国から消えたのです。
主人公の向井実は禁止資料室で働く公務員。
業務は秋に関連する情報とその媒体を整理し保管すること。
その部署にAI搭載のアンドロイド、ユイが配属されることから物語は動き出します。
不条理な状況でこそ、より鮮やかに描き出される心情があります。
あり得ない世界を描くことこそ、SF小説の意義。
センス・オブ・ワンダーの躍動する舞台なのです。
ジョージ・オーエンの〝1984〟や
レイ・ブラッドベリの〝華氏451〟
近年で、あげるなら〝PSYCHO−PASS〟
これらに連なるディストピア小説である本作。
物…続きを読む - ★★★ Excellent!!!理不尽な法律を受け入れても、どこかは歪んでしまうものだと思います🍁
「秋」は違法となりました。
その理由は、感情を乱すものとみなされたからです。
もし、秋を連想させるすべてのものが封印されてしまったら、私たちの暮らしはどのように変わってしまうのでしょうか。
秋を思わせるものは本当にたくさんあります。
紅葉、読書、美味しい食べもの、そして心地よい風――少し思い浮かべるだけで、心が穏やかになるようなものばかりです。
それらを禁ずる政府の理不尽さ。
人の感情を制限し、生産性の向上だけを求める未来を想像すると、どこか胸がざわめきます。
そんな世界で、在りし日の郷愁を心の奥に封じた主人公は、やがてその感情に共鳴するAIと出会います。
合わせ鏡のように、AIの中に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!摂理は抑えようもなく……
政治というのはいつの世も、混迷する宿命なのでしょうか。
このたび、トンデモない物が禁止になってしまいました。
ええ。タイトルの通り、秋です。
『人の感情を揺らしすぎるから』だそうです。
法の力で自然を押さえつけようとするなんて、傲慢この上ありません。
ですが三千十六年ともなれば、できてしまうようです。
主人公の実(みのる)は四季の失われた、均質化された環境の中で生きています。
彼の勤務先は、禁止された「秋」をアーカイブする部署。
写真や詩などを記録には残すものの、触れてはいけない。
うんざりするお仕事に見えるものの、順調にこなしておりますよ?
人付き合いに悩まされ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『ピーキー過ぎてお前には無理だよ』
SFとは、荒唐無稽なことを、
いかに納得させるかである。
例えば、
映画『AKIRA』
冒頭のシーン。
鉄雄が、金田のバイクを愛の手で説明する。
「セラミックツーローターの両輪駆動で、コンピューター制御のアンチロックブレーキ、12,000回転の200馬力···」
そして、金田の名セリフ。
『ピーキー過ぎてお前には無理だよ』
アクセルを吹かすと、超電導モーターがスパークしながら高速回転。ドルゥンと爆発、ガスを散らして、信じられない加速で走り出す。
この描写の中で、テクノロジーは爆発してる。
金田のバイクは、内燃機関により発電。その電力を使い、両輪の超電導モーターは起動している。
そう!
コレが…続きを読む