すでに『世界を変える運命の恋』コンテストを受賞した作品に、今更何を言うことがあるのかという気はしますが。
まず文章表現がとても素敵でした。
冒頭の朝食のシーンだけで作者の卓越した技術が垣間見えます。
そして魅力的な世界観。
ノーザンギアという架空の街は、機械を利用した人が暮らす街のですが、その構造が特殊かつ未来的ではなくスチームパンクと呼ばれる世界観を感じさせ、実際そのような街だと思います。
ですがそこに、極めて高度化された自動機械の数々が動き、謎の暴走事故がある――というお話。
暴走事故の謎を解くというミステリ的な要素を持ちつつ、スチームパンク世界観を余すことなく描き、さらにコンテストテーマである恋愛に繋がる要素までを、非常に短い物語の中で余すことなく描いているのは本当に凄い。
完結はしていませんが、きっとこの先を読む機会は必ず来ます。
そのためにも先に、この素敵な物語を体験してはいかがでしょうか。
「世界を変える運命の恋」中編コンテスト受賞作品。
編集部様の講評どおり冒頭にパワーがあり、特に1行目のセリフが強烈。
読むか否かを最新話や各話タイトルのキャッチ―さで判断する読者様もいるそうですが、この作品はぜひ1話目から!
階層構造の施設で働く少女。
そして感情と記憶が薄い機械人形の青年。
階層を下るごとに追加、解明される要素。
正直、某度し難い漫画(アニメ)を連想しないでもないですが、こうしたメカ要素が強い作品が女性向けレーベルで優秀賞を得たのは、読み手だけでなく書き手へも大きな意義があると思います。
そういう意味でも「世界を変えた」と言えるでしょう。
この作品を獲った編集部様、獲らせた作者様へ満点の評価を贈ります。