概要
それは人類がかつて作り出した――
骨格型AI兵器だった。
文明は何度も滅び、
人類は地下へ逃れ、記憶を失い、
同じ世界を、同じ過ちごと繰り返してきた。
灰が降り続く地上。
風を制御する塔〈ARC-01〉だけが、
世界の呼吸を、かろうじて繋いでいる。
ロッカ・ハイルド。
かつて兵士。
風に命令せず、祈りを“詩う”ことができた、最後の人間。
彼は信じていた。
祈り続ければ、人は救えると。
だが戦場で――
彼は祈りすぎた。
体温が下がり、判断が鈍り、
仲間の制止も届かないまま、
彼は禁じられた一線を越える。
風に、命令した。
その瞬間、世界は壊れた。
殺戮ミサイルが降り注ぎ、文明は崩壊。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!風が笑い、祈りが命令に変わり、その瞬間を体感する物語
舞台は、文明が何度も滅び、灰に覆われた世界。
人類がかつて作り出した骨格型AI兵器によって地上は崩壊し、いまは風を制御する塔〈ARC-01〉だけが、世界の呼吸をかろうじて繋いでいます。
最初に読んだとき、これまでにあまり出会ったことのないテンポだと感じました。
ロッカの視点で語られる描写は一文が短く簡潔で、彼が見るもの、感じるものが五感としてこちらの肺の奥まで入り込んでくる。音や匂いまで立ち上がってくるような錯覚を覚えます。
この風使いの視点では、風は笑い、守り、応える存在として描かれます。
それだけ、この世界で風が人と密接なものなのだと伝わってきました。
中盤に入ると世界の空気が一変…続きを読む - ★★★ Excellent!!!祈りか、命令か――風が問いかける物語
灰に覆われた終末世界で、「風使い」たちは二つの選択を迫られる。風に願うのか、風に命じるのか。主人公ロッカは前者を貫こうとするが、戦場は容赦なく彼を追い詰めていく。
独創的な魔法システムが光る作品です。「祈りの詩」と「命令の詩」――似ているようで決定的に違う二つの力。その境界線こそが、この物語の核心。風に語りかける言葉ひとつで、世界の在り方が変わってしまう緊張感が全編を貫きます。
塔、AI兵器、灰の風…断片的に明かされる情報が、読み進めるほどに壮大な世界観を浮かび上がらせていきます。理性のカイン、筋肉と笑顔のヴィクター、優しさのミラ。脇を固めるキャラクターたちも確かな温度を持ち、「焦げコーヒー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!祈りが命令に変わる時、風は人を裁く
『RETURN ― 風よ、赦せ』はな、「風」がただの自然現象やなくて、人の祈りや命令、そして罪と赦しにまで絡みついてくるSFやねん。
世界は乾いてて、灰が舞う。人が生き延びるために築いた技術や秩序が、いつのまにか人の心の奥――“支配したい衝動”とか、“赦されたい痛み”とか――を引きずり出してくるんよ。
読み味としては、戦場の緊張感がずっと地続きで、息を詰める場面が多い。けどそのぶん、「この世界で人が何を守って、何を失ってきたか」が、じわじわ身体のほうに染みてくるタイプ。
派手なSFギミックにワクワクしながら読めるのに、読み終えたら胸の奥に“重たい余韻”が残る。そこが、この作品の強さやと思う…続きを読む