禁じられた秋に、二人が辿り着いた想いとは――。

この物語は、感情を揺らす季節「秋」が禁じられてしまった未来が舞台。
それでも人が「感じる」ことをやめられないという、何とも切ないSFです!

読んでいる間じゅう、主人公の実(みのる)とAIのユイは、感じることは何かを優しく問いかけてくるようでした。
正直なところ、ヒューマノイドであるユイよりも、徹底的に感情を管理されつつあった人間の実(みのる)の方が冷たく感じるほどでした。

やがて、ユイの中に芽生える秋への憧れは、まるで失われた心の季節を取り戻そうとする希望のようで、いつの間にか、この二人に秋を感じて欲しいと願う自分がいました。

そしてふたりが禁忌を越えて辿りつく紅葉の描写は、息をのむほど美しい・・・!
ラストの悲しい場面ですら、温かい余韻を残してくれたのです。

最後の一葉が象徴するのは、心の滅びではなく、人の記憶の永続だと考えます。

読後、じわり涙が滲む、繊細で深い物語です!

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