概要
行こう。遥か彼方、桃源郷へ生きる為に。たとえそれが、許されなくても
春の終わり、祓い屋・焔は余命を宣告される。
病に蝕まれた身体、冷めた眼差し。
それでも彼の傍には、いつも式神の雅がいた。
主従であり、恋人であり、互いを救い合うことしかできない二人。
雅が拾ってきた古書には、こう記されていた――
「桃の道を行け。そこに、遥か彼方、《桃源郷》がある」
死の代わりに祈りを求めて、焔と雅は西へ向かう。
春を越え、
風の峠を越え、
湖の底で祈りの巫女と出逢い、
月を喰らう都で神と対峙し、
砂の祠で“影の自分”と向き合う。
旅の果てに焔は知る。
祓いとは滅ぼすことではなく、
赦しとは忘れることではない。
――それは、生きることだった。
炎に焼かれ、風に抱かれ、水に沈み、
何度も死を越えて、彼はなお、雅を愛した。
「愛とは赦しか、それとも呪いか」
神が問う
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