第19話 返信



 その夜、風が鳴った。

 焔が眠る傍らで、雅は空を見上げる。

 遠くの雲のあいだから、白い光がひとすじ降りてきた。

 風が頬を撫でる。

 どこかで、懐かしい声がした。


 ——暁の声だ。


 灯は届いていた。

 たとえ言葉が風に散っても、

 祈りは、ちゃんとここまで来ている。


 雅はそっと目を閉じた。

 掌の中で焔の灯があたたかく脈を打っている。

 風の中に、かすかな囁きがあった。


 『どこにいても、あたたかく、笑っていられますように。』


 その言葉に、雅は小さく微笑む。


「……届いたよ、暁。」


 そして焔の髪を撫で、囁いた。


「おまえの灯は、ちゃんと誰かを照らしてる」


 風が止んだ。

 空の月が少し揺れて、

 静かな光が、ふたりを包んだ。

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