第19話 返信
その夜、風が鳴った。
焔が眠る傍らで、雅は空を見上げる。
遠くの雲のあいだから、白い光がひとすじ降りてきた。
風が頬を撫でる。
どこかで、懐かしい声がした。
——暁の声だ。
灯は届いていた。
たとえ言葉が風に散っても、
祈りは、ちゃんとここまで来ている。
雅はそっと目を閉じた。
掌の中で焔の灯があたたかく脈を打っている。
風の中に、かすかな囁きがあった。
『どこにいても、あたたかく、笑っていられますように。』
その言葉に、雅は小さく微笑む。
「……届いたよ、暁。」
そして焔の髪を撫で、囁いた。
「おまえの灯は、ちゃんと誰かを照らしてる」
風が止んだ。
空の月が少し揺れて、
静かな光が、ふたりを包んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます