概要
やがてメイは、毎朝声をかけてくる、不思議な少女「かすみちゃん」と出会う。彼女の正体とは――。
やまももの花が揺れる春の朝、ランドセルがつないだ小さな命の記憶が、静かに輪を広げていく。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!同題材の再創造が示す、物語の豊かな表情
深紅のランドセルをきっかけに、母と娘、そして“もうひとりの少女”の想いが重なっていく物語です。
娘・メイの小学校入学を前に、母の百合子が選ぼうとするランドセル。
そのごく普通の出来事に、小さな不思議と、胸に残るあたたかさがそっと混ざっていきます。
さらに本作は、同じ物語を 四つのスタイル(純文学・詩・ラノベ・朗読台本) で描き分けているのが特徴。
語り方が変わるだけで情景の見え方が驚くほど変わり、ひとつの物語の“多面的な美しさ”を味わえる構成になっています。
深紅のランドセル、やまももの香り、春の光。
どの章を読んでも、すっと目の前に景色が広がるような感覚があり、読み終えたあともし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!貴方のランドセルには、勉強道具以外で何が入っていましたか?
様々な筆致で描かれる、ランドセルに詰め込まれた想いを巡る物語。
主な視点は母親のものだ。今度小学校一年生になる娘のためにランドセルを探していた。しかし、清貧生活を送ってきた母子に、今どきのランドセルは高価な物だった。
しかし、ネットでランドセルを探していた時のこと、母はたった一つのランドセルを譲り受けることに成功する。
娘は何とかランドセルを背負って、小学校に登校するようになり、通学路では友達もできたらしい。しかしその友達には秘密があるようで……。
果たして、そのランドセルに詰め込まれていたモノとは?
そして娘にできた友達の正体とは?
同じストーリーが描かれているようで、細…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一つの奇跡の物語が、心に4色の優しさを残していきます。
ピカピカのランドセルを初めて背負う、優しい風が香る春の季節。
ひとりひとりの優しさが織りなす物語は切なくも美しく、静かに胸を打ちます。
そして今作は、一つの物語をそれぞれ4つの作風で描く短編集です。その4つのどれもが美しい言葉で彩られ、そのどれもが違う響き方や余韻を残します。
前衛的な作品でありながら、そこには実験的な意味合いや気負いなどはなく、ただただ言葉に誠実な作者様の物語への慈しみが感じられます。
第1章は「言葉」の美しさそのもので読ませ、第2章は詩の「リズム」で哀愁を描き、第3章は言葉の存在感を一歩下げて「物語」そのものを届ける。第4章は聞こえてくる声や音に耳を澄ませ、言葉や…続きを読む