本エッセイは蓬葉 yomoginohaが休日に目的地へ徒歩で向かう中で体験したこと、そして体感したものの記録である。
なによりもまず内容の細やかさと濃やかさに驚きました! 著者さんは普通の散策を飾り気なく、それこそさらりと綴っています。だというのにこれがものすごく起伏に富んでいておもしろいのですよ。
なんでもないことから「なにかある」を見つけ出すのは非常に難しいことです。それをその人ならではの視点で見極め、「なにか」を掬い上げていくのはさらに難しい。本作はそれをページがいっぱいになるまで掬っているだけでなく、著者さんならではの視点で表現している。だからこそです。なんでもないはずの散策が旅として成立しますし、出遭った物や事への著者さんの心の動きが刻み込まれ、あるいは浮き彫られることで、旅はひとつの冒険へと昇華しているのですよね。
日常の片端を冒険する中で見出した非日常の記録、読めばあなたもなにかを見つけに歩き出したくなること間違いなしですよ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)