一つの奇跡の物語が、心に4色の優しさを残していきます。

ピカピカのランドセルを初めて背負う、優しい風が香る春の季節。

ひとりひとりの優しさが織りなす物語は切なくも美しく、静かに胸を打ちます。

そして今作は、一つの物語をそれぞれ4つの作風で描く短編集です。その4つのどれもが美しい言葉で彩られ、そのどれもが違う響き方や余韻を残します。

前衛的な作品でありながら、そこには実験的な意味合いや気負いなどはなく、ただただ言葉に誠実な作者様の物語への慈しみが感じられます。

第1章は「言葉」の美しさそのもので読ませ、第2章は詩の「リズム」で哀愁を描き、第3章は言葉の存在感を一歩下げて「物語」そのものを届ける。第4章は聞こえてくる声や音に耳を澄ませ、言葉や物語の「余韻」が心地よく残ります。

読後は物語に感動するのみならず、文章で物語を表現することの意味やその響き方の違いに、言葉の面白さを再認識する次第です。

皆様も是非、この物語の美しさと優しさに触れてみてはいかがでしょうか。

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