概要
四月終わり頃から五月にかけ、藤の花が見頃を迎えます。
藤の花言葉は沢山あります……「優しさ」、「忠実」、「恋に酔う」、そして「決して離れない」。
藤の花言葉は沢山あります……「優しさ」、「忠実」、「恋に酔う」、そして「決して離れない」。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!天地の底ひのうらに吾が如く君に恋ふらむ人は実あらじ
これは恋慕の物語です。
想像してください。
もしも樹木が人に懸想したならば、それはどんな恋慕となるでしょうか?
樹木と比べたならば、人の命の時間はとても短い間でしょうから、樹木の懸想は想い人が死ぬまで続く。
いえ。死んだ後も続くことでしょう。
死が分かつことのない関係。
永劫の執着です。
追われる者には、自覚がない。
追う側には、理性がない。
本作を読む者だけが、その恋慕の理由を知ります。
近世以前の藤は棚仕立てではなく、松の木に絡ませて植栽されていたそうです。
そして松と藤波。
二つの植物の関係性は和歌によく見られる取り合わせのひとつ。
作品の題材の選定から既に作者である遠部右喬…続きを読む - ★★★ Excellent!!!迷いもなければ混ざりものもない。この純度百パーセントの狂的な愛!
この残酷さと隣り合わせにある、鮮烈なる美。
本作の登場人物は「男」と「女」の二人。
藤の花というのは「蔓」を伸ばすタイプの植物。そして他のものに絡みつくという性質を持っている。
この「絡みつく」という感じが、やっぱり「束縛」、「独占」という強烈なイメージを想起させてきます。
藤の花の怪異である、着流しを着た一人の男。その男による、「残酷なまでの愛」が本作では描かれて行きます。
読み終えて感じるのは、「ゾワリと来るような美しさ」でした。
藤の花の怪異は、一体どのような形で女性を愛しているか。その悠久さや手段を選ばぬ迷いのなさに、ひたすら耽美を感じることになります。
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