第6話
あれから五年が過ぎた。
僕は『純潔診断』の商売をやめ、村で漁師として働いている。
昔みたいに差別されることはなくなった。信じてもらえないだろうけれど、僕の額の角がジョバンナと熱い夜を楽しんでから小さくなっていき、それから九ヵ月も経つ頃には消滅していたんだ。
つまり、僕は普通の男になったってわけ。
おかげで僕も一村民として受け入れられ、今は貧しいながらも誰かを苦しめることなく日々を過ごせている。
このまま故郷で生涯を終えるのも悪くないな。そう思っていた。
「クテシアス殿ですね?」
だが、運命は僕を彼女と引き合わせることを望んだらしいんだ。
「あなたは?」
「カリュターニャの宰相です。実は……」
彼は、我が家の居間で王国の内情について話してくれた。
僕が去った後でカルロス陛下はフアナ王妃を蔑ろにし、
その妾と何度も
陛下は数週間前に世を去り、その際にフアナ王妃との間の子を後継者にすると遺言したこと。
前陛下の側近はクーデターに失敗し処刑されるも、国内の混乱は収束を見せずにいるということ。
そして……。
「新王陛下は四歳。そこでフアナ様が摂政となり、陛下を支えております」
「そ、そうですか」
「クテシアス殿。他人事ではありませんよ。フアナ様はこう仰せになりました。あなたをもう一人の摂政として、新王の父として、そして夫として側にいてほしいと」
僕は飲みかけていたワインを床にぶちまけてしまった。
「え、な、何のことだか――」
「とぼけても無駄ですよ。新王陛下があなたとフアナ様との間の子であるという確たる証拠がありますので」
「証拠?」
「決定的な証拠が、新王陛下のここに」
そして、宰相の男は指し示したんだ。僕の額を、それもかつて角が生えていた場所を。
ま、まさか……。
「あなたには王国の混乱を収拾してもらいますよ。先王の妃と不義密通を犯した代償として。拒否権はありません」
僕は宰相から目をそらし、少し考えた末に決めた。
再びカリュターニャ王国に赴くこと。
彼女と、彼女との愛の結晶である我が子に対面すること。
そして、幼い頃から隠し続けてきた恋の種を吐き出した責任を取ることを。
「分かりました。すぐに伺います。あと、すみません。道中でカリュターニャに関する情報をできる限り詳しく教えていただけませんか? もう覚悟はできましたので」
ここで寝床を共にした愛しの人と苦労を分かち合えないなんて、男が
「待っててくれ、ジョバンナ。今行くから!」
(完)
『純潔』暴く角付き青年~暴いた結果、僕は王族になりました~ 荒川馳夫 @arakawa_haseo111
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