夜風に靡くのは水面だけ

おれの思い出は何もかも黒くもろいグズグズになっていた。


おれの希望も、死んでいた。


静かな夜空に、慟哭が響いている。


何もする気が起きない。どうだっていい。この世界に存在していることさえも。おれの希望は失われた。勇気などいらなかった。

何も見たくなかった。


目を瞑った。まぶたの裏を見ている感覚になった。視覚に集中する脳を誤魔化すために、肌を掻きむしった。喉を裂く勢いで叫んだ。灰を口に入れた。


その場に倒れ込んだ。奇行のおかげで、感覚が均等になった感じがする。もう目を開けたくない。


ずっとこのまま、この場所にいる。お腹の中にいた頃のように、体を丸めたまま。


..フウカ...スイ..おれのせかい、


「かみよ もう せかいを あいせない」


白い


「ロクト、愛を手放しちゃだめよ」


足元に目を。そこに希望がある。


........。


。。ずっと声が聞こえる..



「....きぼう..」



おれは、その声に応えるように、声を発した。そしておれの声に反応するように、まぶたに光が当たった。


おれは勇気をもって、家族と手を取り合い、目を開けた。



そう、そこにある。





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