花が咲いた
この世界には、想いが充満している。
慈悲の想いがあらゆる人によりそっている。優しさが光となって道を照らしている。
憎しみがへばりついている。
悲しみが雨を降らす。
そしてここにも、あらゆる感情がせめぎ合っている。
「ロクト、足元に目をおやり。そこに光はある。」
戦場に向かう前に、武器を手に取らねば。畜生共をぶち殺すためだ。剣もナイフすらもない。武器には包丁と鎌、シャベルを持っていく。
家の火は消えた。だけど嫌な臭いがする。燃えカスが肺を刺激する。まだ風が熱い。涙が頬を冷やす。おれの慟哭は、だれのもとにも届かない。
大きく鋭いシャベルは見つけた。熱くて持つことが困難だったからそこらの田んぼの水で冷ました。それは庭の隅に立てかけてあったものだった。
次は、よく研いだ包丁も手に入れたいが、、、家の中に踏み入る勇気がない。
勇気が出ない、家の中に入ってしまえば、きっと2人は死んでいる。
怖い、もう何もかも、未知だ。
俺は、何をすればいいんだ..。フウカ。
白い
光
?...ん?
今、なにかが家の中で光った。一瞬だったが、白く眩しかった。
どこが光った?、あれは、居間の辺りか、?
スイレン、フウカ、生きている?
その時、ふいに言葉が聞こえた。
「ロクト、あなたに勇気を。白く純粋なエーデルワイスは、勇気の花。」
フウカはいつもそう言って励ましてくれた。スイも、真似してよく言ってくれた。
「勇気の花、エーデルワイス、家族で育てている花、大切な、白い光」
それがまだ残っていれば、希望も、勇気も、愛も、抱ける。いつでも家族を思い出せる。たとえ死んでも、忘れたくない、あの輝きを。
「かみよ キセキを」
おれは、大きく息を吸い込んで、燃えカスになっても懐かしい匂いを感じさせる家の中に、踏み入った。
足元に目を。そこに希望がある。
ほら、勇気の花が咲いた。
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