花が咲いた

この世界には、想いが充満している。


慈悲の想いがあらゆる人によりそっている。優しさが光となって道を照らしている。


憎しみがへばりついてる。

悲しみが雨を降らす。


そしてここにも、あらゆる感情がせめぎ合っている。


ロクト、足元に目をおやり。そこに光はある。





戦場に向かう前に、武器を手に取らねば。畜生共をぶち殺すためだ。剣もナイフすらもない。包丁と鎌、シャベルを持っていく。


家の火は消えた。だけど嫌な臭いがする。燃えカスが肺を刺激する。まだ風が熱い。涙が顎をつたっていく。おれの慟哭は、だれのもとにも届かない。


大きく鋭いシャベルは見つけた。そこらの田んぼの水で冷ました。それは庭の隅に立てかけてあったものだった。


包丁も手に入れたいが、家の中に踏み入る勇気がない。


勇気..。エーデルワイス。


おれはいつも勇気を欲していた。だけど今気づいた。人が勇気を発揮するには、場が必要なのだと。人が勇気を発揮する時には、なにかしら奇跡が起きているのだ。


おれには戦場に踏み入る勇気さえあればいい。でも、エーデルワイス。����と一緒に世話をした花。


それがまだ残っていれば、希望を抱ける。いつでも家族を思い出せる。たとえ死んでも、忘れたくない、あの輝きを。おれは燃えカスになっても、懐かしい匂いを感じさせる家の中に踏み入った。



足元に目を。そこに希望がある。



ほら、勇気の花が咲いた。







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2024年10月19日 15:00

フロウス -一輪の男の一生- @Amanoru

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