フロウス -ある男の一生-
@Amanoru
1章 -創造-
それでも輝く星を綺麗だと思ってしまう
戦争が起きた。
人と人の、ありふれた戦争。
それが始まったのは3年前だった。
どこか遠くの国とまたどこか遠くにある国が衝突したらしい。
確かにここから遠く離れていたはずだ。
でも、今、ここで、おれのお気に入りの雑貨屋も、何千回も行き交った愛着のある草道も、おれの家も、家族も、家庭も、燃えている、。
あらゆる感覚が遠ざかっていく。けれど、視覚だけははっきりと、この状況を隈無く観察している。
娘は生きているだろうか、妻は生きているだろうか。観測して推察するだけで、足は動こうとしなかった。
失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない失いたくない
涙が流れている。肌がぴりぴりして痛い、短い間隔で夕空に響く轟音が怖い。
げんじつをうけいれられない
おれは今、希望を求めている。こんな世界でも光り輝く、とびきりの希望を。
おれの希望は、もうないかもしれない。かわいい娘、スイレン。ずっとずっと共に生きてきた妻、フウカ。
もうこの世界を愛せない。
知らない人間が、おれの家族を殺した。
始めから、わかっていたのだ、人は生まれながらにして、悪であることを。
いや、もう人ではない、鬼だ。鬼に何もかも奪われた。鬼どもを、生かしておいてはだめだ。
全身に力が込められた。立ち上がって拳を握った。
火花と灰の中から、一輪の花が這い出した。
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