愛より産まれるのは意思

「スイレン・タチバナ」 「....」

「スイレン・タチバナ。返事をください」

「はい」スイレンはありったけの軽蔑と威嚇の意を込めて言い放った。

「あなたはまだあのインベルという男の子とよく一緒にいるようですね。避けろと言ったはずです」

「はい」スイレンはなるべく言葉が鋭く冷たい印象を与えるように気をつけて言い放つ。

「杞憂だといいですが、彼との交流があなたの精神に悪影響を及ぼす可能性があったら困ります。」

「はい」


こいつらは焦っている。わたしを洗脳できなかったことに。こいつらはビビっている。わたしの得体の知れなさに。こいつらは憂慮している。わたしの存在する未来に。こいつらは狼狽えている。自らの過ちに。

まったく ばかばっかり


わたし立花水蓮は、わたしのお母さんとお父さんに愛されていた。でもある日、死んでしまった。その時わたしは3歳くらいだった。自らの血肉が焦げる臭いに噎せ返りそうになったのを覚えている。まあ、そんな瞬間も一瞬で燃えてしまったのだけれど。


お父さんとお母さんが世界にルールを加えて世界が滅茶苦茶になってしまったとき、わたしの弟が勇者として誕生した。名前はフウト。人の積み上げてきた歴史を簡単に超越する魔を滅するには、祝福が必要だった。お母さんとお父さんは、生物ではなくただ人間を殺すためだけの自然現象のようなものを生み出してしまったわけ。おっちょこちょいね。

それである程度この世界はさっぱりしたけど、月から見守っていたお父さんとお母さんはとても後悔していた。


お母さんとお父さんは第2、第3と勇者を生み出し、魔王と呼ばれていた魔の根源を滅しようとしていたけど、魔王は勇者を殺す度に力をつけていった。結局第7の勇者も負けて、魔王に月を破壊されたしまったのだけど、わたしが1番悲しかったのは、お父さんとお母さんが自らを犠牲に極真星と極偽星を創ったこと。

死んで欲しくなかった。わたしの魂も消えてしまいそうだった。あまりにも悲しくて。


でも、お母さんとお父さんはわたしを守ってくれた。わたしを極真星に繋ぎ止めてくれた。ありがとう、ほんとうに。

そして極真星にあったわたしの魂が、フロウスを創った第7勇者ミラベルとカインの力で肉体を与えられたとき、わたしは極真星から落ちて、フロウスに寝そべった。雪は冷たかったけど、心臓が燃えるように熱かった。

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フロウス -ある男の一生- @Amanoru

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