恵みの雨よ、今は降らないでおくれ
時刻7時半。「いってきます。」そう言ってインベルは家を飛び出した。全力疾走で学校に向かう。遅刻寸前なわけではない、誰よりも早く到着したいのだ。早く先生に言わなければいけないことがある。
同時刻。メメトは今日の魔界授業で使用する形状記憶した"衣"の具合を確認していた。「よし、終わった。あとはコースの確認だな」
時刻8時半。ぞろぞろと教室に生徒が登校してくる。コース確認を終えたメメトは職員室から出てくるインベルを目撃する。
時刻9時。先生より今日の日程、注意事項、緊急時の対応法、などが伝えられ、"衣"が配布される。「それが魔界に漂う瘴気を軽減する。また君達自身の体幹を補強し、呪いを遮断する。防御面でそれがあるとないでは、雲泥の差だ。衣を見るのはともかく、纏うのは初めての者が多いはずだ、今、確認のために一度纏え、」各々支給された、フード付きの、輪郭が鮮明でない、色も白くぼやけたジャケットを羽織る。
それは羽織ったとたんに膨張して身体にピタりと張り付き、規則正しい幾何学模様に埋めつくされた。
「解除。具合はわかったか、それではグループ分けについて変更がある。もう固まってしまった者が多いだろうが、グループはすべて5人に固定する。そしてこのクラスは51人のため、1つだけ6人になる。時間を15分与える。今から再度話し合え」
「そういう事か、」メメトは低く呟いた、それからインベルを見た。インベルはすでに行動していた。その腰にはダガーが光っていた。
時刻9時45分。「決まったか、この5人で今日1日を生き延びろ、ここ2ヶ月魔物の出現は安定して少ない、が気を抜くな。お前たちが生きて帰ってくることを、祈っている。それでは魔界に向かう、全員起立」
「ねえ、インベル君ってさ、すっごく足速いよね。なんか特訓でもしてるの?」
さっきから、サハラさんがしつこく話しかけてくる。女の子と話したことがあんまりないから、少し困る。でも、嬉しいし楽しい。
結局おれは元々2人グループだったものがくっついて、男女2人づつの4人が集まっていたところに入れてもらった。先生に5人グループを直談判したのはいいけど、おれに友達が少ないことをわすれていた。グループワークはやはり苦手だ。
女子はサハラさんとスイレンさん。男子はキウル君とナガツ君。みんな活発ではない方、だと思う。おれもだけれど。
衣を纏って魔界に入る。おれが命を守る。父さん、母さん。おれは、人のためにとっさに動けるようになったよ、それを今日見せてあげるね。
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