変わるってのも現状からの逃げだ
「インベル、将来何するか決まったか?」
とうさんが最近よく聞いてくる。
初夏の太陽の広がった光線が、遍くものに生命力とその消耗を与え始めた頃、俺たちは自身の存在の命題と未来という闇に灯す、知恵の種火を探していた。
「いつまでも死人に執着してないで、じぶんのこともっと考えたら?」 「うん.」
極偽星が天頂に向けて上がり始めたせいで魔のものの能力が上がっている。
「大切な人が死んでしまうのは、悲しいことよ。でも、もう2年経つ。乗り越えなくちゃいけない」 「乗り越えて、何になる。理由がない」
この時季の魔界授業は警戒と安全。守りの季節だ。
「過去に執着すると、時間が狂ってしまうの、あなたの時間が。」 「またそれか..」
今日は火耀日。今一度リンクス防衛の支度をする。衣が冷たく心地よい。
「だったら、もしわたしが死んでしまったら、どうするのよ..」 「...時間だ。..、行くぞ」
点呼と聖歌を済ませ、魔界に侵入するグループと、襲撃から街を防衛するグループに分かれる。スイレンは前者。インベルは後者である。
「わたしは、いつまでもあなたと一緒にいるわけじゃない。学校を卒業したら、旅に出ようと思うの」 「...。」
角笛が響いて、統率された魔と人の軍が相対する。馬が力み嘶く。皆呼吸を整え、余計な思考を遮断し始める。
「わたしはこのフロウスを邁進する。あなたなら、一緒にやっていけると思っていたけど、」 「..ふん..」
交戦が始まり、彼女の背景で光と闇が交差する。彼女の姿は陰り、美しい黒髪が大きく靡く。
「もう、まっていられない」 「スイレン、」
スイレンは戦場に駆けていき、もう振り返らない。インベルは哀愁のそよ風を心にあてながら立ち尽くす。
「スイレン。俺はこうして、戦士としてリンクスを守るために生きているじゃないか。それの、何がいけないんだ」
インベルは自らの矛盾した想いを放置する。心がまた希望を求めて彷徨い始めた。
だれか キラメキを与えてくれ
戦線は維持され、祝福の射出音が絶え間なく耳を突く。
メメトの声が幽かに聞こえる。
「インベル。お前は光だよ」
いつもの幻だ。厄介だよ。静かにしてくれ。
「照らせ、未だ消えないこの世の悪、そして愛を」
愛を忘れないように。誰の言葉だっけ、。
はじまりの神。ロクト・フウカ様だ
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