ガラスのサーカス

どの作品も、
物語の展開が見事で、
外れがありません。
毒と蜜が、
ほどよく合わさった短編童話集です。

　商店街やショッピングモールを歩いているとふと目に止まる店先のガラスケース。
　売り物や店主の好みで飾られた置物達は一見するとなんの繋がりもないはずなのに、同じ空間に納められているという唯一無二の接点が孤立した置物達を結び一つの世界を形成する。

　この儚くも輝かしい作品はまさに作者様の好みで飾られた物語達をガラスケース越しに眺め、それぞれの人物に、世界観に浸り繋げていくような童話集です。

　それはさながら同じテントの中で様々な演目を披露するサーカスのようで、読み終わる瞬間まで、きっと。
　読者の皆様を楽しませてくれるでしょう。

それぞれの物語に人間の本質や感情、葛藤が見事に描かれており、読むたびに新たな発見がありました。

例えば『うそつきジョンの作り方』では、友情や自己表現、そして人間関係の複雑さが描かれています。ジョンが選択した「正直」と「うそ」のバランスが、最終的に彼に孤独をもたらす展開は、切なくも考えさせられるものがあります。社会からの承認を求めるあまり、自分の大切なものを失ってしまうというテーマが心に響きました。

この短編集全体を通じて、作者が人間の感情や社会的テーマに深い洞察を持っていることが伝わってきます。
それぞれの物語が持つ独特な世界観と普遍的なテーマは、読むたびに新たな考えを引き出してくれると…続きを読む

本作は、童話によくあるめでたしめでたし、では終わらないお話が綴られています。

ですが、幸せの解釈は人それぞれ。
一見幸せに見えないからと言って
登場人物たちが本当に幸せでなかったのかは分かりません。
そうであるからこそ、お話の最後に、問いかけてほしいのです。

このお話をあなたはどう感じたのか
登場人物たちはどんな気持ちだったのか

忘れてはいけない大切ななにかを
知ることが出来るかもしれません

基本「童話」なので、もちろん子どもにも読みやすく親しみやすい筆致で紡がれる、皮肉と哲学が入り混じった大人向けの掌編集です。

でも、後世に語り継がれる「童話」って、総じて大人が読んでも十分に考えさせられる道徳的な内容だったりするもの意外と多いですよね。

グリムやアンデルセンを彷彿とさせる、淡々としたストーリーテリングと「もしも」の世界線を繰り返して、一読おちゃらけているようで最後に読み手をひと突きするようなエンディングも読み応えがあります。

ラノベも良いけど、こういうジャンルも増えてほしいなと思う良作です。

繊細な形の甘いチョコレートに包まれた苦いお酒。甘くて、芳醇で、苦味もあって。最後は喉が苦しくなったり、お腹の奥がぽっと温まったり。

ときに「こんなに濃くちゃ割り切れないよ〜」と思ってしまう現実も、童話という名のチョコレートで包めば楽しんで味わうことができるかも。

そんなまさに大人のための童話集です。

１話ごとにストーリー性があり、言葉も綺麗でまさに大人の童話でした。

感受性を高めてくれる大変魅力的な作品だと思いました。

うそつきジョン、とっても好きです。