こんな小説が今までにあっただろうか……。
コアであまりにもニッチ過ぎるケモナー向け……言うなれば、「ハードケモノSF」である上に、古典作品から新しいSF小説まで、細かいネタが各所に散りばめられている。
世界大戦を舞台にした作品は多いが、これはその少し前の時代、19世紀末に活躍した武器商人たちを題材にしており、日清戦争の直後、日本でも英国と同盟を結んで日露戦争に突入していく……という、まさに世紀末の時代を、蒸気(スチームパンク)と毛皮(ケモノ&亜人)で包んだ稀有な作品。
作者も言っているが、この作品がランキングに載ったり、人気が出ることはないだろう。
だからこそ、一言。
いいぞ、もっとやれ!
11/3 追記:第二部の題名は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ディキシーランド」(某映画のパロディ)!
世紀末の南部連合国という、「あり得なかった世界」を舞台に武器商人たちがどう活躍したのか……と楽しみにしていたら、ここでも英国文学だけでなく、アメリカ文学まで幅広くカバーしている著者の知識量には舌を巻くほど。
ついに連載再開! 嬉しいです。頑張ってください!
読者諸兄姉は『スモークスタック(SMOKE STACK)』と呼ばれるウヰスキーを御存じだろうか。
煙を上げる機関車の正面をドーンと描いた派手なラベルに、栓を開けただけで広がる甘口のピート香……。
本作はまさしく『スモークスタック』の如き作品である。
本作の舞台は蒸気機関と電気技術がせめぎ合う大英帝国。
武器商人であるカネトリの視点で物語が展開する。
本作の魅力は何と言ってもその世界観だ。
階差エンジンや空飛ぶ戦艦、機動要塞に名探偵。
濃い語り口で綴られるヴィクトリア朝ロマンは、好きものには堪らないだろう。
作中の歴史は現実世界のものをほぼなぞっており、当時の世界情勢や地政学に始まり、民間風俗などのウンチクも盛りだくさんである。
あまりに詳し過ぎて、ヴィクトリア朝時代のヨーロッパを舞台にした作品を描きたい創作者にとっては教科書、もとい聖書となるだろう。
本作はマニアックな部分ばかりではない。
幻獣、亜人、獣人など、ファンタジー要素もふんだんに取り入れられている。
獣人少女とのてんやわんやは、ケモナー紳士諸君にとって魅力的なシーンになる事請け合いだ。
どうか混迷の時代の混沌とした空気……いや、蒸気を楽しんで頂けたら幸いである。
本作最新章(二〇二三年 三月時点)はアメリカ南部が主舞台で、人種差別を真っ向から扱ったかなりハードな展開が多い。
この章を読み進める時は『奇妙な果実』を部屋に響かせ、『バーボンウヰスキー』を呷るとその哀愁が何倍にも感じられるだろう……。
あ、スモークスタック(スコッチウヰスキー)じゃなくなっちゃった……。
世界中の歴史を戦闘を人の紡いだ文化を
どれだけ頭に詰め込めば
これほどの「帝国」が創造できるのだろうか。
しかも、もふもふしっぽにおみみ、ふにふに肉球
美しいつばさ、竜獣《ドラギノ》、さまざまな
愛おしさうしくしさもつ登場者達に微笑みつつ読み進むと
人種隔離政策・奴隷・デモ・何次期にも及ぶ戦争
苦しさ辛さも重厚に在るから
この世界の人々がさらに、イキイキと現実味をおびる。
血統の区別は、もふもふ愛くるしい登場人物たちにもくだされ
彼らのけなげで、凛とした姿に、元気をも与えられる。
ゆれる灯りがともす室内
握られる銃身の鉄の色
まるでその匂いが嗅げるような表現力に取り込まれる世界に
ワン・オブ・ワン・サウザンド(千挺に一挺)と、
讃えたいです。
まず、世界観が現実の地球に新たにファンタジー要素が加えられた形となっている。
しかし、異世界からやってきたという感じではなく元からそこにいたという物だ。
この考え方は他の小説では見られるものではない。やってくるのではなく元からいたという新しい概念。
では、ストーリーはどうか。
基本的には会話のみで成り立っているがこれがすごい。小説を書いたことがある人ならわかるがキャラクターに会話を続けさせていくのはとても難題である。
意味のない会話を織り交ぜてしまい、読み手に気怠さを与える結果になってしまうことが多いがこの小説は何か意味があり、着実にストーリーが進んでいると感じる。
自分の小説を右に置き、この小説を左に置きながらストーリー構成を真似して生きたいと感じさせられた。
今後、私の小説を書く手が止まったらまた、この小説を振り返るだろう。
素晴らしい創造は、素晴らしい想像力から生まれます。そして、作者の想像力は段違い!
作り上げられた、我々と似ているようで異なる世界。歴史に造詣の深い作者が作り上げた世界は人々が活きる生臭さが漂い、それにふさわしい術数権謀が渦巻いています。そして、子供の頃に図書館で見た古典のロマンをすべて注ぎ込んだような、ワクワクが止まらない架空技術。これだけでも素晴らしいですが、本作の魅力はまだこれから。
ふとした事件から術数権謀の渦中に巻き込まれた主人公:カネトリとヒロイン:リジルを始めとしたキャラクターたちは、どいつもこいつも癖が強く、そして憎めない。
様々な登場人物たちが背負う相いれない各々の歴史をぶつけ合いながら展開するドラマに大満足。最後には、カネトリとリジルのコンビに尊さを感じること間違いなし。
まだまだ、底の見えない世界観に期待が止まらない。そんな作品です。
※Part1読了時点でのレビューです
「レベルが高すぎる……!」「やばい、私、死んだ!!」これが第一印象です。
いやはや、なんともはや。
私はケモナーに馴染みがなかったのですが、これはめっちゃ面白いです!!!
文章に力がある。舞台やキャラが魅力的過ぎる。歴史や映画のエッセンスがそこら中に散りばめられていて凄くオシャレだし、意味の分かるものがあると嬉しくて心臓がドキドキする。「天才」って、こういう人のことを言うんだねえ……
どうしてこんなに凄い作品が未だ日の目を見ていないのでしょう。評価のお星さまも少なすぎると違いませんか。
「そうだよ、これだよ、物語とはこうであるべきなんだ!!」
「皆、読んでよ! こんなに面白いやつにはなかなか出会えないよ!!」
「変態紳士最高だな?!」
「頼む、その身体に触らせてくれ!!」私はもう、色々叫びたくなるんですけどねえ。
断言しますが、これほどの才能をお持ちの作者様は、絶対にいつか書籍化作家として活躍されることでしょう。
――まあ、それは良いんですが。
一体どうしてくれるんですか。元々ほんの少ししかなかった私の「いち作家としての自信」が粉々になっちゃったじゃないですか。責任取ってくださいよばか!!!
※Part.Ⅰ読了時点でのレビューです※
「歴史改変パスティーシュケモノSF小説」という触れ込みの本作。19世紀末の「歴史の歯車が少しだけズレた」大英帝国を舞台に、名作SFや文学作品のパスティーシュを織り込みながら展開する群像劇です。
あらすじには「歴史ファンで文学ファンでスチーム・パンクファンでミリオタでケモナーなあなたにも贈る」と書かれております。
……この時点で「多分自分向きじゃないな」と感じられた方は結構おられそうな気がします。かくいう自分もその一人でしたが。
まったく問題ありません!
あらすじの想定読者要素にひとつも引っかからなかった(ヨーロッパ史素人・海外文学ほぼ読んでない・特にスチームパンクファンでもない・ミリオタでもケモナーでもない)自分にとっても、非常に面白く得るものの多い作品でしたから!!
本作、私にとって面白かったのは主に三点。
・背景設定が濃密でありながら、伝達に無理がない
・会話が面白い
・元ネタとの整合性と改変部分のバランスが上手い
以下にてそれぞれ詳しく語っていきます。
【背景設定が濃密でありながら、伝達に無理がない】
19世紀末の文物・社会情勢・地理など、非常に背景設定が膨大かつ緻密なのですが、実に無理なく話の中に組み込まれています。
やむをえず長尺説明が入る箇所も、緊張感をもった会話場面の一部に組み込むなどして、読み手の関心が途切れないよう工夫されています。
地の文では、端々のさりげない描写が「いまここではない世界」であることを如実に伝えてきて、19世紀末大英帝国風の世界に存分に浸ることができます。
個人的に一番好きな箇所は「Part.Ⅰ/Phase.10 情報屋ブックマン」での情報屋の隠れ家ですね! 奇怪な魔窟の様子は、現代日本の日常ではまず見ることのないような有様でありながら、とても具体的なイメージを喚起してくれます。
【会話が面白い】
どのような要素をもって「会話が面白い」と定義するかは人によって異なるでしょうが……私としてはその一つに「発されている言葉と発言者の真意が、必ずしも一致していない」を挙げたいと思います。
本作の主人公は武器商人です。同僚にも武器商人がいますし、作中では警察官や探偵社や殺し屋といった一筋縄ではいかない連中を向こうに回しています。必然的に「ホンネとタテマエ」は別になってきます。
綺麗事を口にしながら腹の中は真っ黒い連中が多数登場しますし、それは主人公も例外ではありません。
話された言葉のうち、どこまでが本当でどこまでが嘘かわからない……だからこそ、極限状態で放たれた真心からの言葉が光る。本作の会話はそこが面白い。
とはいえそうした化かし合い会話ばかりでも疲れてしまいます。殺し屋出身とはいえ純粋さを持ったヒロインと、主人公との会話は軽快で和みポイントになっています。このバランス感覚も魅力のひとつですね! ケモノ属性のない自分にとっても、ヒロインは十二分にかわいらしく魅力的でした。
【元ネタとの整合性と改変部分のバランスが上手い】
冒頭でも挙げたように、私自身は「元ネタ」にあたる19世紀ヨーロッパ史や欧米文学には全く詳しくないのですが……それでも「ベイカー街の探偵」や「アリスと兎」のような超有名モチーフにはニヤリとさせられました。
また作中で語られる歴史は、自分の知る限りの欧米史と若干違っているのですが、それらの「違い」が相互に関連しあって全く別の歴史を形成していることは、明確に理解できました。例えば「獣人奴隷」の存在など……単にそれらが「存在する」というだけでなく、歴史の相互作用の中で政治や経済にどんな影響を与え、どう歴史を変えてきたか、が伝わってきます。それら数々の「改変」要素が、矛盾なく繋がり合っているのが本当に凄い。
色々と挙げてきましたが、これらすべての要素がシームレスに繋がり合い、信憑性のある堅牢な「歴史の歯車が少しだけズレた世界」を作り上げているのが本当に凄いのです。
興味を持たれた方は、ぜひご一読いただければと思います!
現時点での最新話76話までのレビューとなります。
一言、評価が低すぎる=埋没しすぎてあまりに勿体なさすぎる!
これに尽きます。
あらすじやタイトル等から、とっつきにくさを感じている読み手さんがいるかもしれません。それなら、あまりに損をしていますよ。
本作は電撃最終候補作品です。その方面を目指す方なら必読です。それ以外のラノベ好きにも是非、手に取ってもらいたい作品です。
作品は読めば分かります。すぐに圧倒的なパワーで惹きこまれていきます。
文章構成やその描写等は他の方がレビューされていますので、あえて書きませんが、素晴らしいの一言です。
今のカクヨムの仕様上、仕方がないのですが、こういった作品が埋もれ、日の目を見ないのは本当に残念すぎます。
このレビューをご覧になった皆様、まずは最初の3話分を読んでください。コンパクトな導入部分なのでほんの短時間で読了できます。そこからはきっと無限の世界へ誘ってくれます!
是非とも一読してください。本当にお薦めですから!
率直な感想です。
いや、マジで……。
実際の歴史や文化を織り込みつつも、筆者が書きたいものを書いているというのがひしひし感じます。
さらにそれを裏付けるのは、文章構成力。
とにかく、これがすごい! その時代の背景や知識をさらっと入れるのはかなり難しく、下手をすればただの解説になってしまう……。けれど、それをキャラの背景などに落とし込む事で、そうだったのか! と納得させるフレーバーに昇華しているのです。
また、その時代の歴史好きであれば「もしかして」と思う元ネタもありますし、黄金時代のハリウッド映画を彷彿とさせる世界観なので、させる刺さる人にはとことん刺さる小説となっています。
スキル、チート、成り上がり、悪役令嬢……。そんなネット小説で流行っているものではない、重厚な世界観と純粋に良質な文章をお求めの方には、本当にお勧めです。
と思って読ませて頂いたが……。流石の内容。まだ話数は少ないが、冒頭数話だけでも格の違いを思い知らされた。
PVの動きが悪いのは題材とウェブ小説らしくないタイトルのせいだろう。最近のランキングは上位に小説らしい内容の作品が上がるようになってきたが、それらの作品も注目が集まるまでには時間がかかったように思う。本作もその流れに乗って正当な評価を得られることを願いレビューさせて頂いた。
まったく、埋もれさせておくには勿体ない作品である。
褒める所は多々あるが、筆力だの文体だの題材だのについて長々語るととっつきにくい印象を与えてしまうかもしれない。なのでとりあえず。
電撃大賞最終候補なんぼのもんじゃ!
そんな気持ちで取り合えず、プロローグから読んでみてはいかがだろうか?
私はすっかりやられてしまった。