「歴史」という最もカオスで魅力的な異世界

(Phase30時点で書いております。)
 私はケモナーではありませんし、歴史小説や欧米のSFにも詳しくありません。ですから最初は部分的に理解できる元ネタを見つけて笑ったりしながらも、「世界観を頑張って理解せねば……。」と思っていました。しかしこの小説、そんな努力は必要ありません。実在の(あるいは非実在の)政治勢力や組織・団体の名前や関係図が錯綜していますが、そう言った事情を玄人向けの冗長な説明ではなく、アクションシーンや人物の掛け合いの次元に引き下ろして読者を引き込んでくれます。
 今作は現実の世界史のところどころに「ちょっとしたずれ」、あるいは別作品のキャラクターを混入させることで独自の世界観を作り上げています。例えば「カールマルクスがアメリカ西部でエルフと組んで下剋上(彼も主人公になれそう)」などと、アウェイな取り合わせが不思議と段々なじんできます。もちろん作者様の発想や技術による面白さなのですが、一方で、素材となった現実世界の歴史自体の面白さを再発見させてくれる作品でもあると思います!

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