1-5
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私とランス様は国王陛下によって、電光石火で婚約させられた。
この国で結婚するためには婚約期間を最低一カ月設ける規則になっている。それは
陛下は一日でも早く私たちを結婚させたいために、ひいては婚約も急がせたのだ。この結婚は複雑な事情が
ランス様はこのたび陛下の騎士も、国中の兵士を
あまりの時間の短さに
それほどお金持ちなのだろうか? と思い、王都にいる間に婚約者様の情報収集をしようと思ったら、案外身近にランス様のことを教えてくれる人間がいた。弟のサムだ。
私とランス様の婚約を聞き、貴族学校の
「殿下の婚約破棄は本当に許せないけど、結果、閣下と婚約ならば、姉さん大当たりだよ! やったね。いずれ閣下の弟になれるなんて最高!」
サムは以前からランス様に
サムの話では、ランス様は生まれて
ついでに言えば、アラバスター公爵家は先代(ランス様から見たらおじい様)が王弟で、ランス様のお父上である現公爵は国王陛下の
そんな
十四歳でお父上と共に立った
そしてこの二年にわたる激しい戦いの中、前将軍が
これからも辺境伯という立場で、東の
彼の
初陣十四歳って……前世的に言えば中二だ。あどけなさの残っていたかつての教え子たちを思い出す。
中二でおかしな〈死〉を背負い、大人の思惑で戦場に行かされたのか。今の
ランス様は私より五歳年上の二十三歳。まだまだ若い。これから、たくさん楽しいことがあればいい。
などと思いながら、少しずつ思い出している〈ホンキミ〉のシナリオと
ランスロットとセルビアは、確かヨシオカちゃん
それをきっかけにランスロットはセルビアを好ましく思うようになるのだが、それに気がついたアラバスター公爵家がセルビアをランスロットの嫁にしようと画策し、セルビアとコンラッド殿下の純愛の
ご多分に
そのあとは二人を将軍っていう力をもって支えていくんじゃないかな? とヨシオカちゃんは推測していた。あのマンガは次々と新しいイケメンが登場して騒動を引き起こしつつのメインカップル固定ジャンルだから、ランスロットはさっさとお払い箱だろうと。
さて、この現実世界では、セルビアとランス様はすでに出会ってしまった。
しかし舞台は戦没者慰霊碑ではなく王宮の
……つまりランス様と私は〈ホンキミ〉のシナリオからは外れたと、出番は終わったと思っていいだろう。いや、そうであってほしい。
「でもさ、閣下が素晴らしいほど、姉さんが苦労することになるってわかってる?」
記憶の
「どういうこと?」
「やっかみだよ。閣下は英雄で貴族のトップであるアラバスター公爵家の出だよ。かたやうちはこれといった特色のない伯爵家。またもや格差がありすぎる」
「でも、そんなの私たちに言われたって困るよね。結局前回も今回も婚約は王命なのよ?」
「
「……ちょっと待って。前線で戦っている皆様がいるからこそ、安心して生活できているのに、野蛮ってどういう神経しているの?」
「僕に言わないでよ。お上品な王都の
「本当だとしたら、うちだけでなくランス様にも
「本当だって。父様の
そう言われて父のもとに行けば、サムの言うとおり木箱二つ分、
「エム、見ても気持ちのいいものじゃないぞ。外で
父はそう言って引き出しから、前世風に言えば
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