プロローグ②
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目が覚めると、青い
そして……私、
私の頭にはチハルという女性の人生の記憶が出現していた。なぜ今まで忘れていたのか不思議なくらいだ。つまりこれは私の
チハルであった私は、地球という世界の日本という島国で存在していた。
情熱を持って教育に
ところがある日、担任する生徒の一人が
『みんな……ごめん』
日本語で
目を閉じて……深呼吸して気持ちを落ち着かせる。やるせないけれど、終わってしまったことだ。チハルは不器用なりに自分の信念を曲げることなく
しかし、そこで問題が
まさか私が〈本当の祝福はキミ〉のエメリーン・バルト――つまり悪役令嬢に転生するだなんて!
「光合成の授業中、オタクのヨシオカちゃんから
こんなことってありえるの? 思わず
〈本当の祝福はキミ(略してホンキミ)〉のタイトルにも入っているが、この世界には〈祝福〉がある。
生まれて十日目に
喜ばれるのは〈健康〉〈無病〉などの
私、エメリーンの〈祝福〉は〈運〉だった。記録にある限りで〈運〉という〈祝福〉は初めての出現だったので、判定に立ち会った神官は大いに慌て、大神官に報告し、すぐに王宮に話が伝わった。
やがて〈運〉という〈祝福〉は、
コミックスの二巻にて、エメリーンは戦勝祝賀会の場で王子から一方的に婚約破棄される役どころだ。
『〈運〉の〈祝福〉にしがみついているあなたは
というヒロインのセルビアの決め
「ないわー」
勝手に婚約を結ばせておいて、勝手に婚約破棄とは。それに私の〈祝福〉は確かに期待された幸運を
まだ痛む頭から必死に記憶を絞り出す。
セルビアは前侯爵の隠し子で、彼が
彼女の〈祝福〉は〈
そういえばマンガのヒーローであるコンラッド殿下は、
憧れの将軍のように剣で名声を得たいが、〈牧畜〉では〈剣〉や〈力〉などの〈祝福持ち〉に
王族の〈祝福〉なんて秘密
おせっかいなヨシオカちゃんにネタバレされた記憶では、〈ホンキミ〉は巻が進むごとに次々と現れるイケメンの心を
確かヨシオカちゃんは最新刊は十二巻と言っていたような。エメリーンは
「はあ、悪役令嬢に転生なんて……。まあこの婚約破棄で退場する役だから、今更もうどうでもいいと言えばいいんだけど、でもマンガとは
そう、マンガでは、セルビアとコンラッドは二人で協力し、
だが言わせてほしい。私はセルビアと今日が初対面。存在すら知らなかった。
私の〈運〉という〈祝福〉は、万が一有識者が唱えるように本当に幸運を呼び込む体質だったとしたら、国内外に
だから殿下につきまとったことなどないし、二人と戦っていない。戦いようがない。つまり、〈ホンキミ〉と全く同じ世界ではない―― のかも?
そして〈ホンキミ〉の『運だけでのし上がっていく伯爵令嬢エメリーン』いう登場人物
王子と婚約したことは幸運だったのだろうか? そのせいで苦労した覚えしかない。
この婚約が事情ありきだと知らない大貴族の
さらに、学習系の〈祝福持ち〉と比べられると
それでも私は殿下に恋をしていた。彼しか交流できず、
チハルの記憶が蘇った今、急速に
私はこれからどうなるのだろう。今後のストーリーを大して知らない以上、手の打ちようがないけれど。
この世界は女性が自力でできることなど悲しいほどにない。
王子に婚約破棄された以上、私はとんでもないキズモノとなった。どこかの後妻に押し込まれるのだろうか? それとも
「うちの領の神殿で、また子どもたちを教えるのもいいかもね」
我がバルト領の海沿いに立つ小さな神殿を思い浮かべる。そこではおじいちゃん神官長が、年配のご近所仲間と共に、事情があって神殿に預けられた子どもたちの
神殿の子どもたちに、これまで人手が足りずできなかった事務的教育を
ふと、前世で担任していた生徒たちを思い出す。
「そういえば、私ってば、婚約までしておいて、二度とも結婚できなかったわね」
気づけば頰に
「一緒に幸せになろうって、思っていたの……よ?」
今更あの被害者ヅラ王子と
「っ……泣くな私!
私は傷だらけのエメリーンの心を慰めながら、
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