1-3
私と将軍閣下、二人だけ残された。
王宮のロボットみたいなメイドが
「顔を上げてほしい」
低く、
ゆっくりと頭を起こし、英雄の顔を見る。先ほどの私と陛下の会話を、
確かセルビアと出会って、閣下も
しかし今は面談の真っ最中。前世を思い出している場合ではない。右手を胸に当てて気持ちを立てなおす。とにかく正直に私の思いを伝えよう。
「あの、先日は助けていただきありがとうございました。体調はこのようにすっかり良くなりました」
「役に立ったならよかったよ」
閣下はあんな
こんな人格者の閣下に、私のようななんのとりえもない
「申し訳、ありません」
「何に謝っている?」
閣下は
「私のような不良
「フリョウサイケン?」
ああ、こちらの言葉ではなかったか。
「ええと、
「ゴホゴホゴホッ……」
お茶を飲んでいた閣下が思いっきり
「ゴミなどと……なんてことを。君がゴミだとしたら、私はこれまでゴミのために命がけで戦ってきたことになる。そのようなこと、二度と言うな」
怒らせてしまった。閣下は国民のために、
そしてお
「重ね重ね申し訳ございません」
私は深々と頭を下げた。
「おい……ああ、くそっ! もういい! 頭を上げてくれ!」
体を起こすと、閣下が目を
……困らせている。いっそ、もう
両親も、尊敬する将軍閣下が私と
一番
「サムか……」
「サムとは?」
つい口に出していたようだ。
「弟です。今学校で勉強しております」
「そうか」
閣下がふうーっと息を
「エメリーン嬢」
「どうぞ、呼び捨てにしてください」
「……ではエメリーン、君はその、先日も思ったのだが……私が恐ろしくないのか?」
「え? あの、尊敬しておりますが」
救国の英雄だもの。家族全員で感謝しているし、弟サムに至っては、
「恐ろしくはないのか?」
二度も聞かれた。閣下の言葉は、深刻な様子だから何一つ聞き逃していないはずなのだけれど、さっぱり読めない。
「……すみません、あの、何か恐ろしいことが起こるのでしょうか?」
「わ、私の
見てくれ? 容姿ってこと? そう言われたら、まじまじと見てしまうのはしょうがないだろう。
背が高く、おそらくバランスよく筋肉がついていると思われる体は、給食の牛乳にプロテインを混ぜて飲んでいた、野球部の
頰や首筋に
閣下がいつの間にか、少し赤くなっている。窓を開けたほうがいいかしら。
「閣下のお姿は、大変お強そうで
「やはり
閣下は最初に心配事はカミングアウトして、
「わかりました。ならば、私のことも出来の悪い部下と思ってくだされば結構です。どうぞ気楽にお話しください」
本当に閣下と婚約し結婚するのなら、閣下にご飯を食べさせてもらうということで、ならば部下みたいなものだ。軍の部下の
そんなことを思い、自分にクスッと笑うと、閣下は
「そうだな……どう取り
言ってる意味がまたわからなくなって、私は頭を横に少し
「君の……〈祝福〉について、悪いのだが国王陛下に聞いている」
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