2-3
*****
健康的な生活を強いられてきた習慣どおり、朝五時過ぎに目を覚ますと、隣のベッドにランス様がすでに腰かけていた。私より早いとは!
「ランス様、おかえりなさい。そしておはようございます」
ランス様の目はただでさえ
「えーっと昨夜は
「ああ……」
「あまり、眠ってないご様子、出発を少し後ろにずらしてはいかがでしょうか?」
なぜかランス様が私を
「……眠れていないのは……エムがあまりに無防備すぎるからだ。婚約しているとはいえ半月前まで知りもしなかった男だぞ? もちろん俺は
「無防備! まさか
思わずランス様の言葉を遮り、
現世で初土下座である。
しばしの
おずおずと顔を上げる。
「もういい。朝食をとったら出発しよう。はあ……そうだな、こんな俺と同室を怖がらず、すやすや寝てくれるだけで上々か……いや、俺が意識しすぎなのか?」
頭を
「急所がガラ空きということですね! もう、ご
「いや、首元があまりに無防備だ。喉を冷やすとこの時季は風邪を……」
「やっぱり無防備!」
「……もういい」
私だってランス様の軍事用語? はわからない。一応妻になるのだからこれから勉強しなくては。
宿の
「おはようリング。今日もよろしくお願いね」
鼻筋をそっと
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫! 仲良くしてくれて嬉しいわ」
ちょっと馬
「あ――!」
「エム、どうした!?」
慌ててランス様が
「
なんて
「……エム、昨日の買い物のことは聞いた。靴は今度、俺に買わせてくれ」
「え、ただのぺったんこの安いやつだから自分で……」
「ぺったんこだろうが、トンがったやつだろうがエムの靴を買うのは今後俺の仕事だ! いいな」
あまりの
従順な私にランス様は満足すると、私を左手で抱き上げ、ひらりとリングに飛び乗った。
私だって女子の
彼はゴソゴソと馬に跨った私を自分のベストポジションに合わせ、昨日同様、上から私ごとマントを巻きつけ、私の腰をホールドした。
「雪がとけたとはいえ、朝はまだ、寒いからな」
私の脚はリングの太い
「昨日は私、重かったでしょう?」
と聞けば、なぜか部下の皆様が
「重い? エメリーン様が? 一体部屋で何をさせたんだ?」
「閣下、正式に
「いや、重いのは閣下の感情だろ?」
というワイアット様、ロニー様、ダグラス様の会話をところどころ耳が拾う。
「神に
仲良しの部下の皆様に、ランス様は声を張りあげた。この言い方……部下の手前、気を使ってくれているが、やはり重かったのだ。申し訳なさすぎる。
一行は
お尻にダイレクトにリングの
乗馬を楽しみながら進むこと二時間。私は思ったとおり音をあげた。
「ランス様、お尻が痛くなりました……」
ランス様は左
「初日にしては、まあまあ
ランス様は私の背中をポンポンと叩いて
「これでは、せっかく服を買った意味がありません」
「エムがパンツ姿だと、抱きかかえる時に周りに気を
よくわからないけれど
「ランス様、口を開けて?」
ランス様が何事かと視線を下げ私の手元を見て、納得したように口を開けた。私はポイッとその中に放り込んだ。もう一個取り出して自分の口にも入れる。
「あまーい」
「ああ……甘いな」
ランス様の私の腰に回っている腕がギュッと締まる。自然と体が
「初めての乗馬のレッスン、
「はーい」
キャンディーを舐めたまま寝ると虫歯になりそうだと思ったものの、先生に逆らわずに寝た。
「エムは俺に甘すぎる……」
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