2-2
彼が出かけたあと、コソコソと洗面に行ったり荷物を整理したりする。落ち着いたところで外に出ようとドアを開けると、目の前の
私の安全のため? この町はそんなに
「どちらへ?」
ダグラス様が一歩前に出て
「受付の奥様に聞いて、ちょっと買い物してこようと思って」
「何をお求めですか?」
「洋服よ」
「失礼ですが、貴族のご令嬢の
「奥様、つかぬことをお聞きします」
「はーい! なんでございましょうか?」
「後ろでお手伝いされている、
先ほどから十歳くらいの男の子が、感心なことに大量のタオルを
「え、子ども服ですか? それだったらここからね……歩いて五分かそこらですよ」
そう言いながら、何かの裏紙に地図を
「ご親切にありがとうございます」
地図を受け取りお
「子ども服が入り用なのですか?」
「ええ、多分子ども服で十分なの。ダグラス様、近いからついてこなくても大丈夫よ?」
「閣下……いやキアラリー
あらら、それは申し訳ない。
「ダグラス様、では参りましょう」
私が
「……逆です」
私、まさかの現世、方向
この世界は前世の
日本人が受け入れやすい設定の着地がこのあたりだったということだろうか? ただ、ここのような地方は王都よりも一昔前、といった
男子の服は女が着るとヒップが苦しい問題があるけれど、これならゆったりシルエットで
「あの、ひょっとしてご自分で着用されるおつもりですか?」
「はい」
「なぜ?」
「大人のものだと、きっと大きすぎるのよ」
私は前世も
「いえ、なぜ、男物の子ども服が、入り用なのですか?」
「明日から馬に乗せてもらう時は、
「男乗りを……されるために?」
「リングに直接跨ったほうが、ランス様の
「……ランスロット様にとってあなたの重みなど、虫が乗ってるくらいかと……」
例えるにしても虫なわけ?
カウンターに行き、チョビヒゲのチャーミングな店主のおじさんに商品を
「ダグラス様、ランス様はどんな味がお好みかしら?」
「え? 食べられれば、なんでも
「そう、
私はキャンディーの
「ま、待て、代金は私が!」
「あ、ちゃんとお金、持ってますので大丈夫!」
なんと、これが私の初めてのおつかいなのだ。わくわくである。
「なんだなんだご
「亭主じゃない!」
「てへっ!」
「てへっ! じゃない!」
初めての買い物は、店主とダグラス様と三人での笑いの
店を出て、夕焼けを眺めながらのんびりと宿へと歩いた。
「これは?」
「プレゼントです。これからも
「我々に、ですか?」
ダグラス様は驚いた表情で私とキャンディーを
彼は赤い袋を選び、一つ
「エメリーン様」
私は驚いた。ダグラス様に初めて名前を呼んでもらえたのだ。
「は、はい?」
「ランスロット様は……
「そうなの……それでハスキー……」
「はすき? 好き?」
「ああ、
夜、ランス様はこの町の長にそのまま夕食をもてなされることになり、私は宿で一人、食事をとった。
夕食で出た
しいられてきたんだと、じわじわと腹が立った。
それにうちの一家全員が付き合わされてきたのだからたまったもんじゃない。サムがなかなか
私が
お
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