第二章 新天地への旅路
2-1
ランス様の黒馬は二人乗せているというのに
いつの間にか王都を出て、
「まだ
ランス様が視線を進行方向に向けたまま、話しかけてきた。私も周囲の風景を眺めながら答える。
「あの、おしゃべりしてお
ランス様が後ろでフッと笑った気配がした。
「ならない。ここは戦場ではないから」
「うるさかったら言ってくださいね。先ほどの質問ですが、少し
「リングは
この立派な黒馬の名はリングらしい。
「リング、働きものなんですね。仲良くなりたい」
「馬が好きなのか?」
「馬に乗ること自体が初めてです。私……いろいろと制限された生活でしたので」
危険、と思われることは王家の命令でことごとく
「なので、あまりに世間知らずでご
前世では一通りの経験をしているけど、それはそれ、だ。
「馬が初めて!? ……そうか。どこか
「いえ、今はワクワクしています。ですが、おそらくすぐに音をあげて
教師時代、林間学校で馬に乗った時は、二時間かそこらでお
「そうか。自分の限界を
「まさか!」
チハルの
失敗した? まあいいや。もう深窓の
しかし、ランス様にだけは
「ランス様? こんな話し方、不快ですか?」
「……いや、お
ランス様が再び視線を遠方に戻す。
「ランス様、麦の
「……そうだな」
「ランス様はパンと
「ぷっ、なんだ、景色に感心していたと思ったら食い気か?」
「どっちも重要です!」
あっという間に畑も人の気配も通り過ぎ、ゴツゴツとした岩と赤土の
「エム、ここから先は当分見るところはない。しばらく休んでおけ」
「でも、ランス様は……」
「そのうち交代してもらうさ」
「えーっと?」
私がランス様を乗せて馬を
ランス様が
「景色が変わったら起こしてやる。
私は旅の
「おやすみなのですか?」
ランスロットの後ろにダグラスがつき、声をかけた。
「ああ」
「『
「
エメリーンが眠っているとわかり、ロニーも会話に加わる。
「確かにこの深い
「閣下、ここを抜けたら彼女を乗せるのを代わります。お疲れでしょう」
前を進むワイアットが振り返りそう言うと、ランスロットの声は普段よりも低くなった。
「……
「し、失礼しました!」
「閣下、それって本気ってこと……本物の
側近三人は、これまでの勝手な
「エム、起きろ」
「ランス様、私、よだれ垂らしてませんでしたか?」
「さあ?」
「変な
「さあ?」
教えてよ! ランス様はいじわるだ。
「あの赤い
遠くに人造物が見えてきた。しかし空を見上げれば、まだ日は高い。
「私が旅に不慣れなため、早めに切り上げるのですか?」
「それも理由の一つだが、今後のためにこの町の長と顔を合わせておきたいのと、領地にないものを
私は
町に入り宿に
「お部屋、私と
よく知らない私と一緒で休めるのだろうか? 一人のほうが疲れが取れるのでは? 私は
「……怖いのか?」
「……ひょっとして、ランス様を
それともオバケのほう?
「いや……もういい。行ってくる」
「いってらっしゃーい!」
ランス様は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます