概要
日本人の血には桜の成分が流れているのかもしれない
那智風太郎様の自主企画、「『桜』と『猫』の登場する話」に参加しました。
わたしは精神科病棟に入院していた。
そこには西岡さんというガサツな女の人がいて、わたしは彼女がとても苦手だった。
病気のせいだとわかっていても、病気を治しにきている身にはキツかった。
けれど、数年経って、何度目かの入院の時に私が見たものは、車椅子になり、もう何もわからなくなった彼女。ずっと何もない外を見せられていた。
とても美しい桜の季節だったのに――
わたしは精神科病棟に入院していた。
そこには西岡さんというガサツな女の人がいて、わたしは彼女がとても苦手だった。
病気のせいだとわかっていても、病気を治しにきている身にはキツかった。
けれど、数年経って、何度目かの入院の時に私が見たものは、車椅子になり、もう何もわからなくなった彼女。ずっと何もない外を見せられていた。
とても美しい桜の季節だったのに――
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!差し出された一葉の桜は散り際のその人にひとときの安らぎと温もりを与えた
那智風太郎プレゼンツ『桜猫企画』優秀作品 Best 6
心を病んだ人々が集う場において、煩わしくガサツな行動ゆえにいつも煙たがられていた老女。
夏樹もまた彼女を忌み嫌う者のひとりであったが、季節がめぐり何度目かの春を迎えたその日、久しぶりに見かけた老女の姿に夏樹は愕然としてしまう。
そして思わず差し出してしまったそれは哀れみの産物だったのか、それとも夏樹自身の回復の兆しを示していたのだろうか。
作者の実体験をもとに書き綴ったこの作品はリアルな心療内科病棟の日常を見事に切り取っていることで、その中で起こるドラマもまた切実さを持って読み手の心に強く訴えかける力がある。
また病みと爛漫な桜が明…続きを読む