幼馴染で恋人の女の子が勇者と結婚すると聞いた俺、究極の闇の力「インターネット」を手に入れてしまう

Yuki@召喚獣

第一章  幼馴染で恋人の女の子が勇者と結婚すると聞いた俺、究極の闇の力「インターネット」を手に入れてしまう

劣等感を押し付けてくる奴ら

 小さい頃から、周囲の人間と比べられて育った。


 優秀な兄や、同い年の幼馴染。才能を持った奴らと同年代で生まれてしまったばっかりに、同じ家とか隣の家とかにそういったやつが生まれてしまったばっかりに、俺の人生は小さい頃から今まで『比較』の連続だった。


 やれ兄に比べて勉強ができないだの、やれ幼馴染のあいつに比べて運動ができないだの、物覚えが悪いだの、散々な言われようだった。


 小さい頃の俺はそれはもう純真な可愛らしい子供だったから、そういった周囲の評価を真に受けて自分は出来損ないなんだと、ダメな奴なんだと本気で思い込んで泣き腫らしたものだ。


 両親は兄ばかり構って俺のことはあまり見ようとはしなかった。別に虐待されてたとか、あからさまに無視されたりとか、そんなことはなかったけど、基本的に俺のことに関しては無関心に近かった。


 俺が何かができるようになっても、俺がそれをできるようになった年齢には兄はもっと先に進んでいた。両親の子供は俺と兄だけで、両親にとって子供の成長の基準は自分たちの初めての子供である兄だ。


 だから、兄に比べて成長の遅かった俺は両親にとって期待をかけるような存在じゃなかったらしい。


 小さい頃はそんな両親にも褒めてもらいたくて何かと頑張っていた俺だったが、俺が頑張ったところで兄を超えることはないのだし、兄を超えることが無いということは俺が両親に褒められることもないということだから、いつしか俺は両親の前で頑張ることを止めてしまった。


 俺には同い年の幼馴染が二人いる。俺の家を挟んで両隣の家に同じ年に生まれたそいつらは、俺よりもはるかに優秀な人間だった。


 エルウィンは俺と同い年の男の子だった。くすんだ金の髪に、よく晴れた夏の空のような澄んだ青い瞳が特徴的な、活発な男の子だ。運動が得意で、正義感が強く、勉強もそれなりにできた。俺はエルウィンにかけっこでも腕っぷしでも勝ったことがない。勉強は同じくらいできたけど、そこに関しては兄が圧倒的に上だったから俺とエルウィンはどっこいどっこいといった評価だった。


 リリアンは俺と同い年の女の子だった。艶のある綺麗な桃色の髪に、ぱっちりとした大きな紫色の瞳。愛嬌のある可愛らしい笑顔が特徴的な女の子で、これまたとても優秀な魔術師の卵だった。


 時々村に訪れる教会の司祭様が驚くほどの膨大な魔力量。それを上手に操ることのできる魔力操作。将来は王都の魔術学院に通って名のある魔術師になるのを期待されるような、そんな逸材だ。


 そんな周囲の同年代に囲まれて、俺はそいつらと比較されながら育ってきた。


 もう、さっきも言ったけど小さい頃はそれはもう周囲の言葉を真に受けてめちゃくちゃ落ち込んだし、涙で枕を濡らした回数も一度や二度ではない。なんで俺はこんなにできないんだろう、なんでこんなにダメな奴なんだろうなんて真剣に悩んだことも苦い記憶として残っている。


 でも、成長するにつれて視野が広がってくると、そんな自分の状況を少しずつでも客観的に見れるようになってきた。


 そこではたと気付いたのだ。


 ――別に俺、そんなにダメな奴じゃなくね?


 ていうか、むしろ普通のやつより結構できる方じゃね? みたいな。


 確かに俺の周りにいる奴はめちゃくちゃ優秀な奴らだ。兄は子供の頃から「神童」なんてもてはやされて、うわさを聞き付けた領主様の使いの人が見にくるほどだった。


 エルウィンはその類いまれな身体能力と正義感、体を動かすことの吸収力の高さで、将来は優秀な冒険者か騎士団に入るものだと言われてきた。


 リリアンだって立派な魔術師の卵だし、その辺りと比べられると俺は劣っているように見えるのかもしれない。


 でも、ちょっと待ってほしい。そいつらが優秀すぎるだけで、別に俺って特別できないやつじゃないよね?


 俺が住んでる村の子供の数は近くの町とかと比べても決して多くは無いけど、それでも俺とその周囲しかいないわけじゃない。その村中の子供の中で考えたら、むしろ俺自身はそれなりに上の方にいる部類で、勉強も運動も魔術の扱い方だって上から数えた方が早いくらいだ。


 つまり、俺は決して。決して! 大事なことだから何度だって強調して言うけど、決して!! 俺の周囲の人間が言うような出来損ないではないのだ。


 そのことに気付いてから、俺は周囲に何を言われても特に気にすることが無くなった。だって全体の分布図で見れば俺が上の方にいるのは間違いないことで、その俺より上の人間を見上げたってキリがない。


 俺は特別優秀でもないけど、別に出来損ないという訳でもない。普通よりちょっとできるだけの普通の人間だ。


 でも、周りはそんな俺のことを兄や幼馴染たちと比べてできないダメな奴だって言ってくるし、扱いにも差が現れたりする。何かと俺に劣等感を押し付けようとしてくるのだ。


 俺はそれが、たまらなく気に入らなかった。

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