第9話 書斎ごもり
そんな感じで数日間、私は書斎の隅にあった本棚を漁っていた。
その間は残念ながら……お嬢様に会えていない。
ただ、それに加えて午前の間、書斎に籠るようになったことで、一つ分かったことがあるのだ。
「ぜんっぜん読めない……!」
文字は読めるのに本が読めない。
そう、気づいたことというのは、私の教養についてのことだ。
書斎の利用を許可されてから私はネリーお嬢様と騎士学校について調べようとしていたんだけど……長いこと本に触れてこなかったせいか、全く読み進めることができなかったのだ。
いや、もちろん文字は読める。
読めるんだけど、前提知識とか専門用語とかがさっぱりで、騎士学校の成り立ちについてのことすら、まともに調べられないのだ。
「ちょっとこれ……まずいかも」
そして私はこのことに、貴族のお嬢様のお付き人としての危機感を覚えてしまったわけで。困ったな、この辺りのことについて教えてくれる方はいないだろうか。
もちろん、セブラさんは全て分かっちゃうんだろうけど……
なんとなく、あの人は放任主義というか、聞いても自分で頑張れと言われる気がしてしまって、声をかけ辛い。
もちろん、私は騎士学校に席を置いているわけでもないから、直接騎士学校にいくという手段も取れない。一応、庭師のレイサムさんとか、メイジェリアさんに聞くっていう手もあるけど……
「あ、そうか」
私はそれより、もっといいことを思いついた。
◆
「お嬢様。いらっしゃいますか」
「あらキュージ。どうしたの?」
ある日の朝。自室にまで来られたのが本当に意外だったせいか、今日のお嬢様は声が大きくない。
私が声を掛けると返事が返ってきた。扉のすぐ裏側にいるみたいだ。
「すいません。少々教えて頂きたいことがございまして……お時間ございましたらこの後、テラスまで来ていただけませんか」
噓ではない。本当に教えてほしいことがあるのだ。
流石に自室に踏み入るのはどうかと思うので、後でと言ってみる。
「あら、だったらもうここでいいじゃない! 入って来ていいわよ!」
「えっ……それは流石に……」
「いいのよ! ほら! 入って来て!」
「えっと……」
そう言われると困ってしまう。だって……
「すいません、今両手が塞がっていまして……」
「そうなの! しょうがないわね!」
お嬢様のそんな声が聞こえた直後、部屋の扉が開く。
そっか、両手がふさがってるなら向こうから開けるに決まってるよね。
止めようと思ってももう遅い。ああ、こんなことなら……
「……ねえキュージ。それ、どこから盗ってきたの……?」
「許可はとってますから!」
自分の部屋まで、この山積みの教科書を運んでから声をかけるべきだった……
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